シリーズ・特商法の「書面電子化」規制 電磁的交付、91%が未実施

実施業者のサイトに記載なし、試買調査できず
消費者庁の実態調査で判明、実施予定は2%


 昨年6月に始まった、法定書面の電磁的交付を可能とする特定商取引法の「書面電子化」制度。消費者庁が行った制度の利用状況等の実態調査で、 電磁的交付を行っている事業者はほとんどいないとまとめられていたことが分かった。情報公開制度に基づく本紙の行政文書開示請求で明らかとなったもの。 消費者保護の名目で事業者にとって複雑すぎるルールが設けられたがゆえに、今後具体的な実施予定がある事業者は2%にとどまり、 実施済みとした事業者もWEBサイト等で電子化関連の表記を確認できなかった。期待された業務効率化等のメリットに見合わないコンプライアンスリスクの高さ、 導入コストが業界に二の足を踏ませている現状が改めて浮き彫りとなった。

 

報告書を開示請求一部は「黒塗り」 


   実態調査は委託事業で行われ、昨年10月にNTTデータ経営研究所が約1800万円で落札。10月〜今年2月、 電子化が可能となった特商法6類型の事業者にオンラインアンケート等を行い、3月末に消費者庁へ報告書を提出していた。
 が、調査事業を担当した取引対策課は、結果の公開を求めた本紙に対して「内部の検討用の資料として用いる」と返答。報告書を国会図書館へ納本する予定もないとした。
 このため本紙は調査結果の開示を請求。7月19日付で開示決定を通知され、一部の記載が「黒塗り」された報告書を受け取った。 「黒塗り」の対象はアンケートに回答した事業者の数や類型毎の回答数、電子化を実施済みとした事業者の数、実施状況など。理由は、回答事業者との協力関係を損なう 今後の同様の調査で協力が得られにくくなる≠ネどとされた。

回答事業者の類型 訪販33%、連鎖32%


 報告書においてまず注目されるのが、どれほどの事業者が電子化に踏み切っているか。前述の通り、回答数は非開示。一方、調査項目毎の回答構成比は明らかにされた。
 これによれば、電子化の認知度は90.7%が「知っていた」と回答。しかし、電子化を「実施している」とした事業者は全体の8.2%にとどまり、 残り91.8%は「実施していない」と回答。大半の事業者は電子化を行っていなかった。
 調査結果の注目度をさらに高めるのが、アンケートに応じた事業者に訪問販売、連鎖販売取引が比較的多かったと見られることだ。
 回答事業者が採用していた取引類型の最多は訪販の33.3%で、次が連鎖販売の32.0%(複数回答)。これら2類型が3番手だった特定継続的役務提供 (以下特役)の22.7%を上回った。認知度も訪販で92.0%、連鎖販売で100%に達し、特役の82.4%に差をつけた。
 連鎖販売を中心にダイレクトセリング業界の課題を分析するネットワークマーケティング研究所の宮澤政夫代表は「ここは重要な項目」「(電子化への) 業界の関心度は決して低いと言えない」と指摘する。
 関心度の強弱は、電子化を検討した類型にDS系が目立つことからも窺える。

(続きは2024年9月5日号参照)