DS化粧品2024年後半の取組み 「ポスト・サロンビジネス」の模索続く
組織の高齢化対策待ったなし 幅広い世代への訴求、チャネル多様化
ダイレクトセリング化粧品市場では、2024年の後半戦に向けた取組みが活発化している。 コロナ禍を経て、それまで業界の主要チャネルとしての地位を確保してきたサロンビジネスについても変革の波が訪れており、各社は”アフターコロナ”の機運を追い風にオンライン・オフラインの双方を軸とした新たなビジネスモデルの構築を急いでいる。 一方で、老舗企業では、販売員の高齢化に伴う営業力の低下がいよいよ深刻さを増している。対策を講じる必要性は認識しているものの、抜本的な対策を打てずにいるケースも少なくない。他方では、主力の訪販事業以外の新たなビジネスに進出し、事業基盤の強化に乗り出す企業もあり、各社の方針に違いがみられる。
チャネル横断の施策シニア世代の対応は
ダイレクトセリング化粧品最大手のポーラでは、コロナ禍からの回復が遅れ、苦戦を強いられている。直近の2024年12月期第2四半期において、ポーラブランでは売上高が同7.6%減の459億6600万円、営業利益は同25・2%減の52億4500万円と厳しい状況が続く。20年以上にわたって「ポーラ ザ ビューティー」を中心にサロンビジネス網を構築し、従来型訪販からのシフトを進めてきた同社だが、コロナ禍でリアルの顧客接点が減少したことに加え、委託販売員の高齢化による活動の縮小がここに来て打撃を与え続けているようだ。コロナ禍前は、日本初のシワ改善美容液「リンクルショット メディカルセラム」など、ヒット商品に恵まれた事業展開が目を引いたが、その一方で販売組織の高齢化は着実に進行していたわけだ。2019年末のショップ数が4065店舗だが、今四半期末では2598店舗と、1467店舗の減少。今第1四半期と比較しても約50店舗減少している。 ベテラン世代の販売員引退が大きな要因で、同社はその減少スピードは落ちつきつつあるという見解を示しているが、業績を見る限り下げ止まりの印象は受けづらいと言える。
こうした状況の打開策としてポーラが打ち出しているのが、メンバーシッププログラム「ポーラプレミアムパス」を軸としたチャネル横断にビジネスモデルだ。全ての販売チャネルの顧客IDを統合して、国内全ての顧客に共通のサービス体験を提供する同プログラムは、近年シェアを急速に伸ばしているECや、このところ回復基調がみられる百貨店等、さまざまな販売チャネルを”回遊”してもらい、最終的に「ポーラ ザ ビューティー」などのリアル店舗へアプローチする流れを構築するのが狙いだ。
この仕組みの中には、同社が2024年に1店舗目を開設する予定の新サロン戦略も組み込まれている。同戦略は、OMOを基軸としたビジネスモデルの構築と、ハイブランドとしてのポーラブランドを強化する狙いをもち、特に若年層へのアピールを強めていく。新サロン戦略の具体的な中身は未だ明らかにされていないが、モデル候補となる店舗は成長が見込まれる店舗を対象としており、それら店舗では、新規顧客の獲得数は2ケタ増となっているという。ポーラは、7月に発売した新「APEX」や、それに伴う肌分析プログラムなど、付加価値を高めた商品・サービスでチャネル横断のビジネスモデル構築を推進する構えだ。これらの施策は中長期的なビジネスモデルの変革を見込んだものである一方で、高齢化した販売員をフォローする施策としては弱い側面がある。あるシニア販売員は、これらの施策を基本的に支持しつつも、「新しいやり方に対応できない古い販売員が取り残されるのでは」と不安を漏らす。
組織力の低下コロナ禍が直撃
「販売員の高齢化」という問題は、ポーラだけに限った話ではない。
(続きは2024年8月22日号参照)