ダイレクトセリング化粧品 各社の業態改革が本格化
コロナ禍で見えた「従来型訪販」の課題
OMO戦略が「次の一手」となるのか
ダイレクトセリング業界では、オンライン・オフラインを両軸としたビジネスモデルの構築が進んでいる。コロナ禍の中で、情報発信や顧客とのコミュニケーション強化を目的に広がったOMO戦略は、コロナ禍が落ち着いた現在も、サロンビジネスに次ぐ新たなスタイルとして注目されている。販売チャネルを横断したビジネスモデルへの移行にはIT技術が不可欠だが、デジタルネイティブ世代をはじめとした若年層は、それらの取り組みへの親和性が高い。一方で、これまでビジネスをけん引してきたシニア・ベテラン世代では新たなビジネスモデルの導入が難航しているケースもみられ、業態改革と販売組織の実態に苦慮する老舗企業も少なくない。
販売員の高齢化業績に影響
表は、本紙が2024年12月に実施した「第76回ダイレクトセリング実施企業売上高ランキング調査」をベースに、化粧品を主力商品とするダイレクトセリング(=DS)企業41社の直近実績をまとめたもの。41社のうち、ヤクルト本社は単体ベースの化粧品事業の売上高を「前期売上高」として掲載している。直近業績の増減率をみると、「増収」が12社、「横ばい」が18社、「減収」が11社となった。同売上高ランキング調査では、前期と比較可能な120社の売上高総額は1兆3674億500万円で、前期比3.4%増と市場全体では回復基調にある。一方、化粧品を主力商品とする41社の総売上は4073億7000万円で、前期比0.3%減(卸ベース企業は9掛けで計算)。
41社のうち、エステサロンや地域密着型の店舗といったビジネスモデルを展開している企業は18社となっており、4割以上の企業がサロンビジネスを導入している。サロンビジネスは、従来型訪販に代わる対面型のカウンセリング販売として20年以上にわたって業界に浸透してきた。しかし、コロナ禍になり、顧客との直接対面によるコミュニケーションが困難になり、エステなどの施術も中止、一時的に店舗休業を余儀なくされた。各社は対策を講じ、SNSやオンライン会議システムなどによって顧客や販売員とのコミュニケーションを強化。また、セミナーやイベントも完全オンライン、オンライン・オフライン(リアル)のハイブリッド開催と、多様な形式が広がった。新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類に移行した現在は、店舗は通常営業で展開しているが、ITを活用したコミュニケーションやオンラインを活用したイベントは継続・定着した。一方、コロナ禍によって消費者の購買行動が変化した結果、業績面ではコロナ禍前の水準に回復しきれていない企業も多い。従来型訪販の「見える化」を進め、新規ニーズをとらえたサロンビジネスであったが、コロナ禍を経て、時代にマッチしたさらなる進化が必要とされている。
苦戦のポーラ新戦略に活路
DS化粧品最大手のポーラは、直近の2024年12月期第1四半期では、売上高が同8.4%減の221億6100万円、営業利益が同34.2%減の23億500万円。
(続きは2024年8月8日号参照)