日本エステティック機構の業界健全化案 「エステティックJIS」(仮称)策定へ
多発する消費者トラブルへの対応
訪販サロンへの影響、現時点では不透明
エステティック業界では、消費者トラブルの未然防止・相談件数の減少が長年の課題となっている。特に昨今は、脱毛サロンの返金や倒産に関わる相談や、 HIFU(高密度焦点式超音波療法)による事故が多発したことから、業界でも健全化に向けた取り組みが活性化している。 そんな中、エステティック業界の第三者機関である日本エステティック機構(所在地・東京都千代田区、福士政広理事長、略称・JEO)では、 昨年から「エステティックJIS」(仮称)の策定に向けて動き始めており、2026年の導入を目指している。JEOではこれまで、 エステティックサロン認証など複数の認証制度を運用してきたが、JIS標準化の狙いはどこにあるのか。
22年度は2万件超えた相談件数
エステティックサービスに関わる相談件数(PIO―NET)は、2016年度が7019件、2017年度が8687件、2018年度が6441件、 2019年度が6222件、2020年度が5825件、2021年度が6969件と、概ね5000〜8000件の間で推移してきた。 しかし、2022年度は2万2323件と大幅に跳ね上がったが、これは当時、 脱毛サロンの倒産やそれに伴う返金といった相談が全国の消費生活センターに寄せられたからだ。エステティックサービスは、何かとトラブルの多い業界 というイメージを抱かれがちだが、業界団体を中心にサロンや美容機器、エステティシャンの認証制度整備を進めてきた。
2004年に第三者機関として設立された日本エステティック機構(=JEO)では、エステティックサロン認証、エステティシャン試験制度認証、 エステティック機器認証を事業活動として展開してきた。昨年、経済産業省からの働きかけがあったことを踏まえ、「エステティックサロン認証基準」をJIS (日本産業規格)として標準化していく活動を始めた。開発名称は「エステティックサロンのマネージメント及び品質管理に関する一般要求事項(仮称)」で、 通称「エステティックJIS」として2026年の導入を目指す。
ここでいう「標準化」とは、ものや事柄の単純化、秩序化、試験・評価方法を統一し、製品やサービスの互換性・品質・性能・安全性の確保、環境保護、 利便性を向上する取り組みを指す。JISは、日本国内の産業標準化の促進を目的とする産業標準化法にもとづき制定される任意の国家規格であり、JEOでは、 エステティックサービスの産業標準化を進めることで、業界の健全化をさらに促進することを目指し、「(業界内で)バラバラのルールの方向性を統一化、 明確化する」(JEO)狙いだ。前述のように、近年のエステティックサービスは特に消費者相談件数が多く、「(トラブルを多発するような事業者による) ビジネスが成り立つ土壌が業界内にある」(同)ことに危惧を抱いている。
サロン認証制度 訪販系はわずか
日本国内でのエステティックサービスは、主に特商法(特定継続的役務提供)で規定されている(1カ月以上・5万円超)。 一方、特定継続的役務提供に該当しないサービスを提供している事業者も少なくなく、例えば都度払い式のサロンがそれに当たる。
(続きは2024年7月18日号参照)