消費生活相談のデジタル化 国センの「AI活用」実証実験、見通しは

相談音声通話を要約、自然文で相談情報抽出
現時点は精度に課題、次期PIOで予定せず


 毎年度、90万件前後もの消費生活相談情報が登録されているPIO―NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)。 この情報をAI(人工知能)で分析・活用し、消費生活センターをはじめとする相談現場の負担軽減や、 消費者に対する迅速な注意喚起につなげることなどを目的とした試みが、国民生活センターの主導で進んでいる。 今春までの2年間で、相談員が相談概要をまとめる際のキーワード入力、相談内容の要約、 自然文の入力による特定の相談情報の抽出の3つの「実証実験」にチャレンジした。PIO―NETにおけるAI活用の現状を見ていく。

76百万円を投入


  国民生活センターと消費者庁は22年6月、デジタル社会に即した消費生活相談の受付・処理体制の構築を目的として「消費生活相談デジタル・トランスフォーメーションアクションプラン2022」(以下アクションプラン)を策定。ここに柱の一つとしてPIO―NETの抜本的刷新を盛り込んだ。
 稼働が始まって約40年が経過するPIO―NETは、これまで屋上屋を重ねるような改修が続き、システムが重厚長大化。現状を前提とする一部の改修ではなく、相談体制とシステム全体の再構築をテーマに、26年後半の次期PIO―NET稼働を目指している。
 このアクションプランにおける取り組みの一環として、PIO―NETにおけるAIの活用方法を探る3つの実証実験に着手。まず、22年1月〜7月に、文章解析AIの開発などを手掛けるインサイトテック(東京都新宿区)を委託先として、相談員が手動で選択・入力してきた相談概要の「分類用キーワード」の自動サジェストシステムを構築できないか試みた。
 他の2つの実証実験は、23年10月〜今年3月にかけて、日本電気(東京都港区)を委託先として実施。一つは、電話で受け付けた相談の音声通話記録を文字起こしして、これをAIで要約して相談概要とすることを目指したもの。もう一つは、PIO―NETの検索機能を使って特定の消費生活相談を抽出する際、関連するキーワードを打ち込むのではなく、自然文(話し言葉)を入力して抽出を試みるものとなる。
 22年〜24年にかけて行われたこれら3つの実証実験に、委託費用として計約7600万円を投じた。
実用化「まだ早い」

実用化「まだ早い」


 このうち、自動サジェストシステムの構築を目指した実証実験は、電話等で受け付けた相談を相談概要にまとめてPIO―NETに登録する際、候補として適切なキーワードを相談員が個々に判断し、選択・入力している現状の手間をAIで軽減することが目的。国センの情報管理部によれば、入力の候補となるキーワードの種類および件数は相談内容関連で「500弱」(ほかに商品・役務関連のキーワードを活用)にのぼり、現場の負担となっている。

(続きは2024年7月11日号参照)