消費者庁の特商法執行「消費者被害推計額」KPIに“復活”
消費者基本計画「工程表」の改定案で削除
特商法の大型処分、再び加速する懸念も
特定商取引法の執行に関するKPI(重要業績評価指標)をめぐり、消費者庁の方針が二転三転している。問題のKPIは、 特商法で処分した事業者の売上高等に基づく「消費者被害の推計額」。昨年、具体的な消費者施策のロードマップである「工程表」に盛り込まれ、 大型処分≠加速させる懸念も囁かれていたところ、今年3月に公表された「工程表」の改定案で削除されていた。しかし、6月14日に正式決定した「工程表」において、 この推計額が復活=B達成ラインの修正を予定していた別のKPIも、昨年と同じ尺度に戻された。改定案のKPIは何故、くつがえされたのか。
重点項目に執行強化
国の消費者政策は、その方針を定めた「消費者基本計画」を消費者基本法に基づき、5年毎に策定。「消費者基本計画」を踏まえた具体的な取り組みは、 「工程表」と呼ぶロードマップにまとめられ、「工程表」は毎年5〜6月頃に改定(閣議決定)されてきた。
昨年6月に改定された2023年度版の「工程表」は、重点項目として14個のテーマを記載。このうち8個が消費者被害の防止を目的としており、 このテーマの一つに「特定商取引法等の執行強化等」が取り上げられてきた。
消費者庁で特商法を運用する取引対策課は預託法も担当。執行強化の対象には預託法も含まれるが、同庁による適用は過去に1例しかなく、 事実上、特商法の執行が最優先のミッションと位置付けられている。
「工程表」の重点項目毎に盛り込まれた具体的な消費者政策は、その進捗状況を測定・把握・評価するためのKPIを個別に設定。「特定商取引法等の執行強化等」では、 活動目標(アウトプット)のKPIとして4種類、成果目標(アウトカム)のKPIはタイムラインの異なる計5種類を定めている。
活動目標のKPIは、特商法の処分件数や事業者・消費者団体向けの説明会の受講者数など。23年度版の「工程表」の評価書において、 国と都道府県を合わせて計132件の処分を行ったことや、説明会は14回を開いて200人以上が受講したことを報告している。
予算獲得で活用
これに対して、成果目標のKPIは、評価のタイミングを初期・中期・最終の3ステップに区分。このうち中期ステップのKPIとして、 「公正な取引の確保」と「行政処分対象事業者の過去の売上高や契約金額の推定累計額を元に算出した消費者被害の推計額(以下被害推計額)」の2つを盛り込んでいた。
(続きは2024年6月27日号参照)