フリーランス新法11月1日施行へ
政省令を公布、禁止・遵守事項にほぼ変更なし
公取委が「適正化室」、独禁法・下請法に優先し適用
▲11年より稼働する「フリーランス・トラブル110番」は、
フリーランス新法が施行された後も、同新法の対象とならない
取引上のトラブルに関する相談を受け付けていく
(写真は公正取引委員会等の関係省庁の合同作成資料より)
フリーランス新法が施行された後も、同新法の対象とならない
取引上のトラブルに関する相談を受け付けていく
(写真は公正取引委員会等の関係省庁の合同作成資料より)
いわゆるフリーランスの保護を目的として、仕事を委託・発注する側に対して禁止・遵守事項を設ける「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(以下フリーランス新法)の施行期日が、 5月31日に公布された政令で11月1日と決まった。同日に公布された、禁止・遵守事項を定めた政省令は、有識者検討会の提言を踏まえた当初の案からほぼ変更なし。 不利益行為をフリーランス向けの「トラブル110番」に持ち込まれた場合、勧告や命令、罰金といったペナルティが待ち構える。さらに、公正取引委員会は独占禁止法や下請法に優先して適用していく方針を示し、 問題案件を調査する専門部署を発足させた。ダイレクトセリング業界も無関係と言えない同新法の現状を見ていく。
委託期間1カ月以上
フリーランス新法の柱は、仕事を委託・発注する側(新法では業務委託事業者もしくは特定業務委託事業者と呼称)からフリーランスに対する不当行為の禁止事項と、 取引条件の明示やハラスメント対応の体制整備といった遵守事項の2つ。禁止事項は公正取引委員会、遵守事項は厚生労働省のそれぞれの有識者検討会で議論され、昨年に提言がまとめられていた。
さらに今年に入り、フリーランス新法の規制対象となる業務委託の期間について、公取委の検討会が取引適正化に関する期間を1カ月以上、厚労省の検討会が遵守事項に関しては6カ月以上とすることを提言。 この提言を踏まえた政省令案の意見募集を4月12日より開始し、5月11日に受け付けを終了していた。
5月31日に正式に公布された政省令は、意見募集にかけられた案からほぼ変更はみられず、今後、既報通りのルールの適用が11月より始まることになる。
報酬減額など禁止
フリーランス新法が禁止する主な不当行為は、フリーランス側に責任がないのに報酬を減額したり相場に比べて著しく低い報酬額を設定すること、正当な理由がないのに物品の購入や役務の提供・利用を強制すること、 金銭・役務その他の経済上の利益の提供を求めることなど。
遵守事項は、フリーランスの募集広告の内容が正確・最新であること、報酬額などの取引条件を直ちに書面等で明示すること、60日以内の支払いサイトなど。 仕事を委託・発注する側からフリーランスにハラスメント行為があった場合に備えた相談窓口の整備では、相談を行ったことを理由とした契約解除などの不利益取り扱いを禁じる。
また、取引関係の中途解除や不更新は最低30日前までに予告すること、解除等の理由の開示を求められた際に応じることを義務化。フリーランスが育児や介護に携わっている場合、委託した業務と両立できるための配慮義務も盛り込んだ。
「副業」が該当も
意見募集で寄せられた意見の数は114件。政省令の原案にほぼ変更はなかった一方、フリーランス新法の適用範囲の確認などを求める意見に対して、国の考え方が示された。
その一つが「副業」の扱い。企業に勤める従業員が別の企業から業務を委託されて行う「副業」は、フリーランス新法における「業務委託」に該当する場合、 当該従業員はフリーランス新法の保護対象である「特定受託事業者(=フリーランス)」に該当し得える旨が示された。
(続きは2024年6月13日号参照)