シリーズ・特商法改正と消費者庁

結果は非公表、「電子化」「海外規制」実態調査
取引対策課「内部の検討用」、長官「あくまで基礎調査」


 昨年、特定商取引法の「書面電子化」規定の利用状況の調査や、訪問販売等の不招請勧誘規制および連鎖販売取引の開業規制に関する海外の実態調査に乗り出していた消費者庁。この調査結果が3月末までにまとまった。しかし、同庁は本紙の取材に対して、いずれのデータも庁内のみで活用し、外部に公表しない旨を回答。特商法が規制する7取引類型の海外の規制状況を調べていた新未来創造戦略本部も非公表を述べた。電子化のデータは”施行2年後見直し”で参考とされ、海外の規制実態は将来的な法改正への伏線となる可能性がある。調査結果は税金を投じて得られた以上、広く共有されるべきだ。

▲特商法の「書面電子化」利用状況や、
海外の不招請勧誘規制と連鎖販売の
開業規制の実態調査の結果につい
て、消費者庁は公表しない旨を回答
(写真は「書面電子化」規定の利用
状況実態調査の仕様書」)

何重ものハードル


 昨年6月にスタートした特定商取引法の「書面電子化」規定は、紙媒体しか認めてこなかった法定書面(申込・契約書面と概要書面)のデジタル形式による交付を”解禁”。書面交付義務に縛られてきた6取引類型にとって、規制緩和の恩恵が期待された。
 しかし消費者保護の名目で、政省令によって何重もの高いハードルが課されることに。一例が、電磁的交付を受けることへの承諾を消費者から取得した場合、そのことを「証する書面」を紙媒体で渡すルールだ。このほかにも複雑な手続きが設けられ、実態としてダイレクトセリング事業者のほとんどは電磁的交付を行っていない。
 このような不満を拾い上げることにつながると考えられたのが、消費者庁が着手した「書面電子化」規定の利用状況の実態調査になる。昨年10月、委託事業としてNTTデータ経営研究所が落札した。

訪販等5類型も追加


 調査対象は事業者と消費者の2種類。事業者の調査内容はアンケートとヒアリング、WEBサイト等の目視調査、覆面形式の試買調査など。アンケートは10社程度の候補から絞り込み、回答が不十分だった事業者には面会形式でヒアリングを実施。目視調査は政省令が求める義務記載事項等などを確認し、試買調査は2社程度を予定していた。
 消費者が対象の調査は1000人以上の規模を想定。インターネットで契約申込等を出来る試験的なECサイトを用意し、疑似的な購買行動を通じて電磁的交付の手続きを体験してもらい、説明義務事項の閲覧状況や理解度などを調査するとしていた。
 当初は、特定継続的役務提供に限定した調査を予定していたが、訪問販売など残り5類型も追加。日本訪問販売協会等の業界団体を介して、アンケートの範囲を拡大していた。

不招請規制など調査


 海外規制の調査を目的とするもう一方の事業は、三菱UFJリサーチ&コンサルティングが昨年12月に落札した。メインテーマは、インターネット・デジタルを用いた消費者取引に関わるトラブルへの対処と、現行の法律の枠組みでは規制・処分が困難なトラブルについて、海外の主要国がどのような法律でどう対応しているのか。その実態を広く調べるとしていた。

(続きは2024年5月23日号参照)