揺れる米MLMマーケット ネオラ訴訟で敗訴の米FTC、「勧告的意見」で業界けん制

DSSRCの自主規制に「重大な懸念」
ピラミッドスキーム該当基準、業界に「誤解」


 昨年、ピラミッドスキームへの該当性を争った「ネオラ訴訟」で敗訴した米FTC(連邦取引委員会)が、MLM業界に対して巻き返しを図ろうとしている。今年3月、FTCの消費者保護担当部門のスタッフによるアドバイザリー・オピニオン(勧告的意見あるいは助言的意見)の形で、米DSA(ダイレクトセリング協会)の自主規制組織が策定した報酬開示ガイダンスの有用性に重大な懸念点があると指摘。DSAには、20年前のオピニオンで示されたピラミッドスキームの該当基準が”誤解”されていると強調した。オピニオンはFTCの”公式見解”と一致するものではなく、FTC法の見直しも伴わないが、業界として無視できないことは確か。今のところ業界側は平静な態度を崩していないが、今後の展開によっては対応を迫られそうだ。

▲FTCスタッフの見解として、
業界の自主規制ガイダンスの有用性
への懸念や、ピラミッドスキームの
該当基準の誤解≠指摘する書簡を送付
(写真はFTCからDSSRCに出された
アドバイザリーオピニオン)
 

MLM訴訟で初の敗訴


 昨年9月、歴史的と言える”敗北”を喫した米FTC。ネオラ(米テキサス州、ジェフリー・オルソンCEO)のMLM事業がピラミッドスキームに該当するとして、事業の差し止め等を求めていた訴訟で、ピラミッドスキーム運営の事実はなく、FTCの請求を認めない判決が連邦地裁から言い渡された。
 提訴は19年。4年に渡った裁判の末、FTCは控訴を断念し、ネオラ側の勝訴が確定した。MLMを相手にFTCが敗訴した初の事例となり、米DSAは「待望の判決が出た」「ダイレクトセリングが正しく行われれば消費者に評価され、感謝されることを確固たるものにした」とする声明を出した。
 判決は、ピラミッドスキームの該当性を判断する目安の一つであるコスコット審決――最終消費者への製品販売に力点が置かれているかどうかについて、この要件への抵触をFTCが立証できていないと指摘。ビジネス会員による製品購入が最終消費者への販売に該当しないというFTCの主張について、ビジネス会員の大多数が報酬を目的に製品を購入していることが裏付けられていないと判断した。MLMの活動に関心をもたず割引特典のみを目的としたビジネス会員が存在することや、愛用会員への製品販売が不自然に考慮されていない点なども指摘した。
 業界は15年の「ビマ訴訟」、16年の「ハーバライフ訴訟」、19年の「アドボケア訴訟」でFTCに対して”連敗”。億ドル単位の和解金や報酬モデルの見直し、MLMからの撤退を余儀なくされてきた。それだけに、長らく続いてきたMLMとピラミッドスキームの境界の考え方に大きな一石が投じられた。

「有害性が大きい」


 しかし、劣勢を強いられる形となったFTCも巻き返しを図る。3月15日、DSAとその自主規制組織であるDSSRC(ダイレクトセリング自主規制協議会)に、FTCの消費者保護局マーケティング慣行部アソシエイトディレクターから、問題のアドバイザリー・オピニオンが送付された。

(続きは2024年5月9日号参照)