2023年の「特定商取引等事犯」検挙状況
被害額1114億円、過去10年で最大
販売預託商法の「VISION」摘発で
警察庁が4月12日までにまとめた2023年(1〜12月)の生活経済事犯検挙状況によると、特定商取引法違反で検挙した「特定商取引等事犯(関連の詐欺、恐喝等含む)」は被害額を前年より大幅に拡大させ、被害人員数も増やした。特商法の訪問販売規制に違反したとして、大規模な被害を生じた販売預託商法の元会社役員らを検挙したことなどが理由。
被害全体の98%
23年の被害額は1114億6262万円で、前年比は約10・9倍(グラフ参照)。金額ベースは約1012億円の増加で、14年以降の過去10年間で最大となった。
これまでは、20年の約219億円が最大だった。同年は住宅リフォーム訪販の「明治建築」を摘発。同社とグループを形成していた「メノガイア」「さくらメンテナンス工房」などを含め、摘発前の直近1年で約200億円を売り上げていた。
23年の検挙事件数は前年より減らし、3件減の108件。過去10年間では21年の106件に続き、2番目に少なかった(最多は14年の173件)。
特商法の7取引類型毎の検挙被害額は、訪問販売が1092億7597万円で、前年比は約36・6倍増。被害額全体の約98%を占めた。被害額を急増させた訪問販売は、被害人員数も増やし、前年比で1万7294人の2万5571人とした。訪販の検挙事件数は9件減の85件、検挙人員数は54人減の136人、検挙法人数は12減の12事業者。
禁止命令違反で有罪
訪問販売の被害額の大幅増は、23年1月、販売預託商法を展開していた「VISION」(以下V社)の元役員2名を広島県警が逮捕した影響が大きいとみられる。V社と、その前身企業による契約を含めた推定被害額は、警察が同社と関係先を家宅捜索した21年時点で約674億円。その後の捜査過程で被害額が膨らんだとみられる。2名は起訴され、同年4月に執行猶予付きの有罪判決を受けた。
V社は、多目的テレビ電話機用のUSBメモリを1セット約60万円で販売。USBメモリは同社が預かって貸し出し、そのレンタル収益から3年間で72万円を支払うと謳っていたが、実際の支払いの99%はメモリの売上から行われていた。
(続きは2024年4月25日号参照)