消費者庁の特商法執行 消費者被害推計額」KPIから削除

1年前、消費者基本計画「工程表」に追加
取引対策課「売上イコール被害額ではない」


   昨年、特定商取引法の執行強化のKPI(重要業績評価指標)に、特商法で処分した事業者の売上高等に基づく「消費者被害の推計額」を盛り込んでいた消費者庁が、同推計額をKPIから”削除”することが分かった。特商法の企画・立案・執行を担う取引対策課によれば、庁内で検討した結果、「消費者被害の低減」という新たなKPIに切り替える。同推計額は、処分業者の売上を単純に合算しただけと見られ、疑問符をつける意見も聞かれていた。一方、新KPIの中身は現時点ではっきりせず、執行の方向性が定まらない印象を強めている。

ロードマップで重点項目に


   国の消費者政策は、その方針を定めた「消費者基本計画」を消費者基本法に基づき、5年毎に策定。「消費者基本計画」を踏まえた具体的な取り組みは、「工程表」と呼ぶロードマップにまとめられ、「工程表」は毎年5〜6月頃に改定(閣議決定)されてきた。
 現行の「工程表」は、昨年6月に改定された2023年度版で、重点項目として14個のテーマを記載している。うち8個が消費者被害の防止を目的としており、「消費者事故等の情報収集及び発生・拡大防止」「成年年齢引下げに伴う総合的な対応の推進」「高齢者、障害者等の権利擁護の推進等」などを列挙。ここに「特定商取引法等の執行強化等」も盛り込まれ、重点項目の一つとされた。
 消費者庁で特商法を運用する取引対策課は預託法も担当。執行強化の対象には預託法も含まれるが、同庁による適用例は過去になく、事実上、特商法に絞り込んでいる。

成果目標の中期ステップで設定


 現行の「工程表」は、活動目標(アウトプット)と成果目標(アウトカム)の2種類のKPIを設定。このうち、前者である活動目標のKPIは、
・国の特商法による行政処分の件数
・都道府県の特商法による行政処分の件数
・執行担当者に対する研修の実施日数、受講者数
・事業者団体と消費者団体向けの説明会の受講者数
――の4つを設定。
 処分件数のKPIは、2015年度を初年度とする「消費者基本計画」で採用され、法執行の現状や積極さなどを測る尺度に用いられてきた。昨年より以前の「工程表」にも存在し、引き継がれる形となっている。
 これに対して、成果目標のKPIは、達成の度合いを測るタイミングを、初期・中期・最終の3ステップに分類。このうち、中期のKPIにおいて、「公正な取引の確保」と「行政処分対象事業者の過去の売上高や契約金額の推定累計額を元に算出した消費者被害の推計額」の2つを盛り込んでいた。
 「公正な取引の確保」は、PIO―NETの苦情データ等を通じて動向を把握し、残りの初期および最終ステップの2つのKPIも、同様の方法で把握するとされている。

行政事業レビューで19〜21年度分、活用


 一方、中期ステップのKPIのもう一つである「行政処分対象事業者の過去の売上高や契約金額の推定累計額を元に算出した消費者被害の推計額」は、文字通り、特商法で処分した事業者の売上等をもとに、消費者被害額を推計するものとなる。

(続きは2024年4月25日号参照)