デフレ脱却時代のMLM業界展望 日本ネットワークシステムズ
重要性高まる他社との差別化
一般向けなど販売チャネル拡大も
アフターコロナの現在、社会経済活動の回復が進んでいる。デフレ脱却に向けた機運も高まりを見せており、ダイレクトセリング業界においても事業拡大に向けた取り組みが活発化している。コロナ禍の中、リアル・デジタル双方を活用した施策が定着、さまざまなアプローチで会員や顧客をフォローできる仕組みが構築された。DX推進企業が増加した一方で、老舗企業ではレガシーシステムからの変革が難航している。今年で45周年を迎える日本ネットワークシステムズ(本社・宮崎県宮崎市、髙山 隆憲、略称・JNS)は、600社以上のMLM企業にシステム支援等を行ってきた。常務取締役・上野敬之氏に、デフレ脱却時代のMLM市場の現状と課題について聞いた。
(インタビュー実施日は2月21日)
▲常務取締役 上野敬之氏
―――MLM業界では、コロナ禍を経てリアル・デジタル双方の施策を駆使したビジネスモデルが定着しましたが、イベントやセミナーはリアル回帰の傾向が強まっています。
「コロナ禍で社会環境は大きく変わり、デジタルツールの活用が必須となってきました。MLM業界も多分に漏れずデジタルツール等を駆使して売り上げを上げてきましたが、リアルでのイベント・セミナー開催で、『コミュニケーションビジネス』と呼ばれるMLMでは、多くの方がリアルでのビジネスの良さを改めて痛感されました。新規会員獲得率においても、TV会議等での契約率とリアル面談での加入率では明らかに違います」 ―――株価のバブル期以降の高値更新をはじめ、日本経済回復への期待感が高まっています。要因の1つには、コロナ禍からの脱却という点もあると思われます。MLM業界でも、追い風が吹き始めていると…。
「弊社お取り先では、メンバー様向けオンラインシステム『e―MACS』等、デジタルツールを使いながら効率化を上げてリクルートを行い、対面での面談で会員間の絆を強めています。やはり、MLM業界でもデフレ社会脱却では他社との差別化、商品の差別化が必要ですが、プラスしてMLMではコミュニケーションの場作りが重要です。そのためにも、傘下メンバーの状況などの情報把握が必要で、セミナーの開催やリクルートに必須のツールとなっています」
「デフレ脱却社会では、他社との差別化に加え、販売チャネルを広げることも重要です。MLM企業でもコミュニケーションによる販売のほかにも、オンラインでの販売が必要です。多くの企業では、会員向けのオンラインショッピングを導入していますが、消費やビジネス活動の勢いを強めてデフレ脱却へ進むためには、一般ユーザー向けの商品販売チャネルも必要となってくるでしょう。もちろん、会員との差別化は必要です。商品価格の差別化、購入商品群の差別化はもとより、会員報酬への還元もシステムと連動するかたちで必要となるでしょう」
―――MLM企業を支援する立場から、現在の業界動向をどのように見ていますか。
「2023年5月に新型コロナウイルスの位置づけが変更されたことで、起業の活動が活発化してきています。昨年よりMLM企業の新規立ち上げ、外資系企業の日本進出と国内MLM市場も活発化してきました。これからは事業をいかにスムーズに立ち上げるかがポイントになってきます。前提として、国内企業・外資系企業を問わず、日本の特定商取引法等、関連法令を理解しシステム化することが不可欠になります。弊社の主宰企業様向け基幹システム『MACS』や、メンバー様向けオンラインシステム『e―MACS』は、会員情報入力時に企業が必要とするコンプライアンスチェックを行うことが可能となっています。また、投資系等の”物なし悪徳マルチ”など悪質事業者との差別も重要となります」
「物流における『2024年問題』は、MLM業界にも大きな課題となっています。国土交通省も運送運賃の値上げは8%ぐらいと提言し、4月より送料の値上げも出てきています。ドライバー不足で商品の翌日配送が不可能になって来ている中、いかに早く商品発送データを運送会社に渡すことができるか重要となっています。
(続きは2024年3月28日号参照)