ダイレクトセリング化粧品 販売員確保への対策は
懸念されるベテランの大量離脱
若手販売員の育成が急務
ダイレクトセリング業界では、分野を問わず販売員の確保が大きな課題となっている。もっとも、これは今に始まった話ではなく、20年以上前から問題となっていた。しかし、近年は人口減少にともなう労働力不足を背景により深刻化しており、如何にして販売員を確保していくか、各社が頭を悩ませている。特に、老舗の化粧品企業ではこの問題の影響は大きく、長年にわたって事業を支えてきた団塊世代を中心としたベテランの販売員が、今後5年〜10年で大量離脱することが予想される。コロナ禍を機に引退したケースも少なくなく、また、これまで主流となってきたサロンビジネスもコロナ禍を経て変革の時期を迎えていることから、DS化粧品全体が過渡期に入ったと言える。
▲スムーズな世代交代こそ事業継続の要
(写真はワミレスコスメティックス)
(写真はワミレスコスメティックス)
”美容のプロ”育成も歯止めかからず
ダイレクトセリング化粧品最大手のポーラは、90年以上の歴史をもつ最古参企業だ。バブル期には20万人もの委託販売員を擁していたが、現在(2023年12月期)は約2.3万人と、10分の1近くの規模となっている。ただし、これは委託販売員の位置づけが異なるためだ。”20万人”は、従来型訪販を担ってきたポーラレディの数字で、”約2.3万人”は、現在の委託販売チャネルにおいて営業活動に携わるビューティーディレクター(BD)の人数。ポーラは、2016年1月に経営体制を刷新し、合わせて委託販売員の構成を変更。ポーラレディが愛用者的な販売員を含む人数だったのに対し、BDは美容のプロフェッショナルとして、ビジネスに専念する人材と位置づけて、さまざまな研修・リクルート制度を用意して次世代のビジネス人材の育成を目指してきた。
当初、BDは約13万人の委託販売員をベースとしてきたが、年々販売体制のスリム化を進めて2017年には約4.2万人までに絞り込み、”精鋭集団”としての色合いを濃くしてきた。現在の約2.3万人という規模がポーラの計画値だったかは定かではないが、コロナ禍によってビジネス環境が厳しくなったことに加え、BDの高齢化に伴い、団塊世代をはじめとするベテランの離脱といった要因が、委託販売員の減少を加速させているとみられる。
ベテラン販売員の離脱に合わせるように、「ポーラ ザ ビューティー」を含むポーラショップの店舗網も縮小が続く。一方、ポーラが先ごろ発表した新サロン戦略は、現時点で将来の好材料に乏しい委託販売チャネルをカバー、あるいはそれに代わる販売チャネルとして、今後、国内のショップ網として展開する可能性がある。ポーラは、新戦略のサロンについて、「ポーラ ザ ビューティー」のような従来の店舗よりエステベッド数を増やした大型店舗を新たに出店するほか、既存店舗のリニューアルも計画しているという。また、委託販売チャネルで培ってきたノウハウを活用することを前提とし、営業スタイルは直営に限らないとしている。ただ、新サロン戦略を担う委託販売員は、店舗自体が20代〜40代の顧客を想定していることからも、団塊世代のようなベテランではなく、もっと若年世代の委託販売員をメーンとすると考えられる。ポーラでは、美容に関心をもつ若年層をメーンターゲットとした「ポーラ リクルート フォーラム」をはじめ、若年世代にアクセスしやすい接点によって、新規販売員の獲得を進めているが、ベテラン販売員の離脱が新規販売員の加入を上回る状況はしばらく続きそうだ。
難しい販売組織の改革
ベテラン販売員の離脱・引退に頭を悩ませているのは、ポーラだけに限ったことではない。
(続きは2024年3月21日号参照)