ダイレクトセリング化粧品 「ハイブリッド施策」の強化こそ

リアル・デジタル双方向で
サロンへの誘客がカギ


 消費者の価値観やライフスタイルが多様化し、購買行動も大きく変化した。ダイレクトセリング化粧品分野では、サロンを軸としたビジネスモデルは、コロナ禍の中でデジタル施策を活用して顧客接点の拡大を図ってきた。アフターコロナの現在、リアル施策へ回帰する動きが強まっているが、同時に非接触型のサービスや、”おうち美容”など、ユーザーのライフスタイルに合わせた施策も継続して展開している。コロナ禍で変化した消費者の購買行動は、一見するとコロナ禍前に戻りつつあるが、変化に応じたサービスや商品の展開が一層求められている。カギは、人のつながりを活かしたリアル施策と、多様化したニーズに対応したデジタル施策の融合だ。

▲実店舗ではリアル施策ならではの
体験で訴求(ポーラ)

顧客ID統一で販売チャネル横断


 ダイレクトセリング化粧品市場では、ポーラをはじめとする老舗各社を中心に、サロンビジネスによる販売網を構築し、従来型訪販からの脱却を進めてきた。コロナ禍において、消費者の購買行動に変化が生じた結果、コロナ禍前のサロンビジネスでは、ニーズをキャッチしづらくなってきているのが、2024年時点のダイレクトセリング化粧品市場を取り巻く環境と言える。サロンビジネスは、従来型訪販の課題であったビジネス現場の不透明性に対し、地域に密着したオープン型の店舗を構えることで「見える化」を進め、新規ユーザーの間口を広げてきた。
 全国に「ポーラ・ザ・ビューティー」(=PB)などを展開するポーラは、対面で行ってきたカウンセリングをオンライン化し、スタッフと顧客の接触時間を減らす施策を実施してきた。同時に、公式アプリなどを活用して、顧客接点の確保を強化した。その一方で、PBをはじめとする店舗網は、コロナ禍を契機に縮小傾向にある。PBは、ピーク時は670店舗以上を全国に展開していたが、現在は約510店舗と、ピーク時の4分の3近くにまで減少。「エステイン」などの他形態のショップや百貨店のポーラコーナーといった店舗数も、ピーク時の4000店舗近くから約2800店舗と縮小している。
 この背景には、「販売員の高齢化に伴う店舗網の縮小」という業界全体を覆う課題がある。訪販ビジネスでは、長らく販売員の高齢化、それに伴う営業力の低下が大きな課題となっており、サロンはそれを解決する方策の1つであった。しかし、四半世紀近く経過した現在、サロンビジネスの一線で活動してきた販売員もさらに高齢化が進み、引退というケースが散見されるようになってきた。
 訪販・サロンチャネルが苦戦する一方で、ポーラではECチャネルのシェアが伸長している。2023年12月期第3四半期では、売上シェアはPOLAブランド全体の6.5%。主力である委託販売チャネルの62.5%に比べると微々たるものだが、売上伸長率では、委託販売が2.1%減であるのに対し、ECは20.3%増と大幅増収を続けている。同社は、オンラインとオフラインのチャネル融合(OMO)を推進し、各チャネルの特性や強みを活かした顧客接点の強化が、アフターコロナにおける事業のカギとなるとして、2023年4月から新メンバーシッププログラム「ポーラプレミアムパス」を導入。全ての販売チャネルの顧客IDを統合して、国内全ての顧客に共通のサービス体験を提供する施策を実施している。ECを入り口としたサロンへの誘客は徐々に成果を上げている模様で、2024年に本格的な動きを見せるとみられる。また、旗艦店「ポーラ ギンザ」などでは体験型イベントを定期的に開催し、リアルならではのブランド訴求を行っていく。

リアルでしか味わえない体験提供 


 化粧品企業では、技術やホスピタリティなど優れたスキルをもつ美容チームが、各種ショーのバックステージを担当する取り組みも行われている。

(続きは2024年2月1日号参照)