2023年ダイレクトセリング化粧品市場 〝アフターコロナ〟で 新たな展開 

デジタル活用や商品の付加価値強化
変化したニーズの獲得こそ


 ダイレクトセリング化粧品市場では、コロナ禍を経て顧客接点のあり方が大きく変わった。顧客接点と販売チャネルの多様化を目的にスタートしたサロン展開は、 普遍化するにつれて多様化・細分化が進んできたが、「リアルでの対面」が大きく制限されたことで、 アプリやSNSといったデジタルツールを使ったアクセスが新たに加わった。2023年は、5月に新型コロナの感染症法上の位置づけが変更されたことで、 「アフターコロナ」へのシフトが大きく進んだ。この中で、対面でのカウンセリングや施術等のリアル施策への回帰もみられるが、 デジタルツールを活用したコミュニケーションや〝おうち美容〟など、新しい取組みが相次いだ。

▲サロンの役割を「都市型」と「郊外型」に
   区分して展開(シーボン)

リアル接点が減少 サロン訴求に課題


  全国に「ポーラ・ザ・ビューティー」などを展開するポーラは、コロナ禍の中、対面で行ってきたカウンセリングをオンライン化し、 スタッフと顧客の接触時間を減らす施策を実施してきた。同時に、公式アプリを2021年11月から導入し、顧客接点の確保を強化した。アプリでは、 ポーラの研究知見が裏付ける情報をベースに、地域や季節、肌悩みなどに応じた美容情報、多様な視点から身の回りのさまざまな物事の本質を探るライフスタイル、 アートやカルチャーなど計100以上のコンテンツを配信。店舗の検索、お気に入り店舗で実施をしているキャンペーンやイベントなどの情報発信・申し込みなど、 店舗体験への利便性も高めた。
 「ポーラ・ザ・ビューティー」は、ポーラが2000年代前半から進めてきた「脱・従来型訪販」を象徴する位置づけのサロンであり、 コロナ禍前は670店舗以上を全国に展開してきた。コロナ禍で顧客との直接対面によるカウンセリング等が困難になり、同時に消費者の購買行動が変化し、 ECなど他の販売チャネルの活用が増えたことで、「ポーラ・ザ・ビューティー」は営業を中止するケースも出てきた。現在、店舗数は約510店舗と、 ピーク時の4分の3近くにまで減少している。「エステイン」などの他形態のショップや百貨店のポーラコーナーといった店舗数も、ピーク時は4000店舗近くあったが、 現在は約2800店舗と、コロナ禍の中で大きく数を減らした。
 一方で、シェアを伸ばしたのがECチャネルで、直近の2023年12月期第3四半期では、売上シェアはPOLAブランド全体の6.5%。 主力である委託販売チャネルの62.5%に比べると微々たるものだが、売上伸長率では、委託販売が2.1%減であるのに対し、ECは20.3%増と大幅増収を続けている。

(続きは2023年12月28日号参照)