格安SIMの連鎖販売、規制強化へ
届出代理店の73%が連鎖、関連苦情を問題視
省令・ガイドライン改正、来年1月より運用へ
いわゆる「格安SIM」を取り扱うMVNO(仮想移動体電気通信事業者)。これを連鎖販売取引で提供する企業とその個人代理店(ディストリビューター)が増える中、 代理店の勧誘活動に起因する消費者トラブルを問題視した総務省が、電気通信事業法の省令およびガイドラインの改正によって、規制強化を図ろうとしている。 同省に届け出た代理店の4分の3は連鎖系が占めており、〝総務省お墨付き〟を謳うなどの苦情がさらに増えかねないと判断。 連鎖販売を含むMVNOに代理店の監督責任を厳しく問う見直しなどが予定されている。
SIM連鎖に逆風 ゼロモバイル処分
連鎖販売取引の業界で、5~6年ほど前から取り扱い事業者が増え始めた格安SIMサービス。既存の携帯電話や通信サービスからの乗り換え、 リクルートに熱心なディストリビューターの利用などを見込んでいた。
また、参入した事業者の多くは化粧品や健康食品といった主力をすでに持ち、格安SIMはサブアイテムに位置付けていたところ、 メイン商材として売り出す連鎖販売も複数社が登場。業界内で、存在感を徐々に高めていた。
しかし、今年に入ってからは、格安SIMの連鎖販売に逆風が吹いている。
その一つが、3月の消費者庁による「ゼロモバイル」の行政処分(4月13日号1面既報)。動画広告を見れば、電話料金が無料となるかのように説明していたなどとして、 同社とグループ会社2社に特定商取引法違反で9カ月の取引等停止命令と指示を出した。
同社の連鎖会員数は約2万7000人。SIMカードの利用者を含めると計3万8000人のユーザーを抱え、約6億8000万円(21年6月期)を売り上げていた。 が、処分発表の同日、法令遵守の徹底に努めていく旨を説明する一方で、連鎖販売事業からの撤退を表明した。
そして、この処分と歩調を合わせるかのように、MVNOを含む情報通信業全体を所管する総務省でも、 格安SIMの連鎖販売がターゲットと言える規制強化の動きが浮上してきた。発端は、総務省が4月?日に開いた「消費者保護ルールの在り方に関する検討会」(以下検討会)だ。
総務省の検討会 「一定数の苦情、継続」
以前より、説明不足の勧誘や大手企業と誤認させる不実告知のトラブルを抱えてきたMVNOなどの通信市場に対して、総務省は?年、電気通信事業法の改正によって、 販売代理店の届出制度を導入。営業を始める前に、事業者情報や連絡先、媒介する通信サービスなどを届け出ることを求めてきた。届け出された情報は、氏名・名称、届出番号、 法人の場合は法人番号が総務省のWEBサイトで一般公開されてきた。
4月の検討会は、この?年改正後におけるトラブルの状況をテーマに審議。事務局は資料において、過去4年間で勧誘・不実告知関連の苦情の割合は減少が見られることから 「制度改正は一定の効果が出ている」と評価した。
他方で、「一定数の苦情は未だに継続している」として、「引き続き、これらの不適切事例について、 執行強化や事業者のさらなる自主的取組を促すことで法遵守の徹底を図るべき」と提案。検討会の複数の構成員も賛同の意見を示した。
ここで、苦情が続く背景として注目を集めたのが、4年前に始まった販売代理店の届出制度。個人の販売代理店が急増していること、 苦情の内容に代理店の対応等に起因すると見られるトラブルがあること、その代理店の多くが格安SIM連鎖の個人代理店(ディストリビューター)であることが指摘された。
(続きは2023年11月16日号参照)