シリーズ・特商法の「書面電子化」

消費者庁が実態調査へ、ただし「特役」のみ


訪販など5類型は対象外、
「試買」困難を理由に
「模擬サイト」調査はオンライン完結型に限定


 訪販、連鎖販売は対象外――。6月に施行された改正特定商取引法の「書面電 子化」規定。これに基づく法定書面の電磁的交付の実施・利用状況について、消 費者庁の予定する事業者実態調査が、特定継続的役務提供(以下特役)のみを対 象に行われようとしている。同庁は、特役と同じく電子化が可能となった5取引 類型の除外について、覆面形式の試買調査が難しいことを理由に説明。さらに、 消費者1000人以上を対象に模擬サイトを利用して行う調査は、オンライン完 結型の特役に絞り込んで行うという。3年前の発案段階から特役の“特例扱い” が際立つ電子化。他の類型との間に不公平感を生んでいる。

アンケートやヒアリング、目視調査も

▲総額4000万円の予算で委託を
予定する「書面電子化」実態調査は、
特定継続的役務提供のみを対象とし、
訪問販売や連鎖販売取引など
5類型は除外されている
(写真は委託先公募の「仕様書」)

  実態調査は委託先を 公募。10月25日の入札 を予定し、来年3月末 までに調査を終えるス ケジュールだ。調査は 2種類が予定され、一 つは事業者が対象。も う一つは、このタイプ の調査では珍しく、一 般消費者を対象として いる。  事業者の調査は、調 査会社によるアンケー トとヒアリング、WE Bサイト等の目視調 査、試買調査を予定。 20~30問程度のアンケ ートは、10社程度の候 補から調査会社と消費 者庁が協議して絞り込 む。アンケートの回答 が不十分だった事業者 は、個別に面会形式で ヒアリングを行う。  目視調査は、政省令 が求める義務記載事項 等を満たすかどうかな どを確認する。試買調 査は2社程度を予定。 アンケートを行う事業 者とは別の事業者を対 象に、いわゆる覆面形 式で行うという。  これに対して一般消 費者が対象の調査は、 契約申込等をインター ネットで出来る試験的 なECサイトを複数パ ターン、用意。この 〝模擬サイト〟を使っ て、消費者に「疑似的 な購買行動」(公募仕 様書より)を依頼する。

アンケートやヒアリング、目視調査も

 モニターとなる消費 者は、〝模擬サイト〟 で、電磁的交付を希望 する段階から始めて、 電子書面の受領を事業 者が確認する最終段階 まで「一連の手続につ いて体験」 (同)する。 その後、政省令の説明 事項を閲覧できたか、 理解したかなどについ て、10~20問程度のテ スト、アンケートを受 けてもらう。調査の規 模は、有効回答ベース で1000人以上を想 定している。
 調査の結果は特定商 取引法の「制度検討に 活用する」(公募仕様 書より)。調査事業の 検査を担当する消費者 庁取引対策課の川崎豊 課長補佐によれば、2 025年に迎える〝施 行2年後見直し〟も見 据えた取り組みにな る。 〝施行2年後見直し〟 は、改正特商法の附則 で「書面電子化」規定 の施行から2年を経過 した時点で運用状況等 を踏まえた見直しを検 討すると定めているこ とを指す。

「証する書面」の電磁的交付、前提

 しかし、2種類の調 査とも、対象とする事 業者の取引類型は特定 継続的役務提供(以下 特役)に限定。電子化 が可能となった他の5 取引類型 訪問販売、 連鎖販売取引、電話勧 誘販売、業務提供誘因 販売取引、訪問購入は 除外される。
 特役のうち、政令で 指定された7種類の役 務のどれを調査の対象 とするかは、消費者庁 と調査会社が協議の 上、決める。当然なが ら、事業者が電磁的交 付を実施していること が前提となるため、7 種の役務の一部のみに なる可能性もあるとい う。

(続きは2023年10月19日号参照)