FTCが敗訴、差し止め請求退ける 連邦地裁が「ネオラ」訴訟で

コスコット審決への抵触、立証できず
会員の欺瞞的説明、会社は責任負わず


  MLM事業で獲得可能な報酬や販売する健康食品の効果に関する虚偽の説明を行い、禁じられているピラミッドスキームを運営したなどとして、米FTC (連邦取引委員会)がFTC法第5条(不公正または欺瞞的な行為・慣行の禁止)違反などを理由にネオラ(Neora、旧社名ネリウム、米テキサス州、 ジェフリー・オルソンCEO)の事業の恒久的な差し止めなどを求めていた訴訟で、テキサス州北部地区連邦地裁(ダラス支部、バーバラ・M・G・リン裁判長)は9月28日、 FTCの請求を認めない判決を言い渡した。10月1日時点でFTCは控訴に関する方針を公表していない。

米DSAが声明「待望の判決」


 判決は、FTCがMLM企業を相手取った差し止め訴訟で敗訴した初のケースとみられる。提訴に対し、異議申し立ての訴訟を起こしていたネオラは同28日、 「記念碑的な勝利がもたらされた」とするリリースを公表した(異議訴訟は20年9月に却下)。
 ネオラが加盟している米DSA(ダイレクトセリング協会、ワシントンDC、ジョセフ・N・マリアーノプレジデント兼CEO)は同28日、「待望の判決が出た」とする声明を公表。 「ダイレクトセリング(DS)が正しく行われれば消費者に評価され、感謝されるものであることを確固たるものにした」などと強調している。
 DSAは昨年9月と今年7月の2度、裁判所にアミカスブリーフ(第三者意見・資料)を提出。ピラミッドスキームと合法なDSを区別してきた従来の法解釈を踏まえた裁定を求めていた。

最終消費者めぐるFTC主張、不採用


 提訴は19年11月。訴訟でFTCは、被害救済のためネオラによる金銭支払いも求めていたが、高利ローンの消費者被害をめぐる21年の最高裁判決で、 FTC法第13条(b)に基づく被害回復権限がFTCに与えられていないとする判断が示されたことを受け、差し止め要求の可否のみが判断された。
 判決では、ネオラによるピラミッドスキーム運営の事実はないと判断。同スキームの該当基準として最終消費者への製品販売に力点が置かれているかどうかを示した、 コスコット(Koscot)審決の要件に抵触していることをFTCが立証できていないとした。

(続きは2023年10月12日号参照)