日司連「デジタル空間、物理的場所と差異ない」
オンライン勧誘、第34条4項
(公衆の出入りする場所以外の場所で勧誘)の適用可能性は?
7月13日、FX(外国為替証拠金取引)の自動売買ツール作成ソフトの連鎖販売取引をWEB会議ツールで勧誘していた「Liam(リアム)Co;Ltd.こと上倉大知」 (東京都渋谷区)と勧誘者4人に対して、特定商取引法違反で消費者庁が行政処分を出した(7月27日号1面既報)。
対象の取引類型は連鎖販売と電話勧誘販売の2つ。後者は、WEB会議ツールを用いたオンラインミーティングに参加するためのURLをメッセージアプリで送信したことが、 特商法が定義する「電話をかけ」る行為に該当すると判断。WEB会議ツールによるリクルートを電話勧誘販売として処分した初の事例として業界関係者の注目を集めている。
一方、コロナ禍を機に業界で広まったオンラインリクルート型の連鎖販売の初処分という点から、注目を寄せる関係者も。一部の法律系士業団体が、特商法の第34条4項が禁じる 「公衆の出入りする場所以外の場所での勧誘」は、WEB会議ツールを用いたデジタル空間の勧誘にも適用されるべき――と主張してきたからだ。
今回の処分で認定された連鎖販売の違反行為は、氏名等明示義務違反、断定的判断の提供、適合性原則違反、支払能力を虚偽申告させる行為、概要書面および契約書面の不交付。 特商法第33条の2で規定する氏名等明示義務の違反は、統括者の氏名や勧誘目的、FXソフトの販売目的を明らかにせず、「最近、投資をしているんだけど、やってみない」 「〇〇(=WEB会議ツールの名称)で教えてあげる」などとのみ告げていたことから認定された。
一方、特商法の第34条4項違反は今回、認定されていない。同項は、連鎖販売取引の契約締結を勧誘する目的を告げずに、公衆の出入りする場所以外の場所で勧誘することを禁止。 違反すれば行政処分の対象となり、3年以下の懲役または300万円以下の罰金の対象となる(併科あり)。 処分された事業者は、FXソフトの購入という特定負担をともなう連鎖販売の勧誘であると事前に明示しておらず、第34条4項の前半の条件にあてはまる。 ただ、公衆の出入りする場所以外の場所という後半の条件については、WEB会議ツールを用いたオンラインミーティングがそれに該当するかどうか、 現行の逐条解説に記載は見あたらない。
(続きは2023年8月3日号参照)