消費者委員会WGが骨子案 「破綻必至商法」排除、法制度見直し提言

行政に処分・破産申立権、「違法収益はく奪を」
高利謳う取引に届出義務、悪質事案あぶり出す「指標」も

 「ジャパンライフ」に代表される「破綻必至商法」の排除と被害救済を目的に、消費者委員会のワーキング・グループ(WG) が法制度の見直しを求める提言をまとめようとしている。やり得を許さない違法収益はく奪制度を目標に、これを有効に機能させるための行政処分・破産申立権の創設や、 高利率を謳う取引の届出義務、悪質事案をあぶり出す「指標」の開発といったアイデアが浮上している。

▲〝「ジャパンライフ」「ケフィア事業振興会」
   「MRIインターナショナル」に代表される
   「破綻必至死商法」の排除と被害救済を目的に、
   新たに行政処分・破産申立の権限などを設けるべき
   とする骨子案をまとめた
(写真は昨年8月の中間報告の概要)〝

昨年3月、議論着手

    提言の策定を進めているのは、消費者委員会の下部会である「消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ」(以下WG、 座長=後藤巻則早大大学院法務研究科教授)。設置は18年2月。2000億円超に達する消費者被害を生じ、17年末に破綻した「ジャパンライフ」の問題も念頭に、 消費者行政全体の〝グランドデザイン〟を描くという趣旨で立ち上げられた。
 WGとしての提言は、これまでに19年と21年の2度、報告書を作成。このうち、消費者法関連のルールのあり方や実効性確保の有効策などをテーマとした1度目の報告書は、 悪質商法に行政が徹底対応すべきとの観点から、被害救済の面に関して、事業者側の自主的な取り組みや民事ルールによる救済は限界がみられ、 諸外国に比べて不当収益はく奪制度・制裁金制度の整備が遅れていると指摘していた。  そして、1度目の報告書から3年を経過した昨年3月、「ジャパンライフ」事件に代表される「破綻必至商法」の排除と被害救済を掲げて、新たな議論に着手。 現行の法制度とその課題を分析し、1度目の報告書の内容を掘り下げ、更なる提言をまとめる作業に入っていた。
 今年5月までに計12回を開いたWGでは、大学教授や弁護士、消費者団体、消費生活相談員といった有識者のほか、関連の法制度を所管する消費者庁、金融庁、 法務省を対象にヒアリングを実施。昨年8月には中間報告をまとめていた。
 ここでの議論を踏まえ、報告書の骨子案が示されたのが5月26日の第46回WG。骨子案は、消費者庁および消費者委員会設置法の附則で、 多数消費者被害発生事案における不当収益はく奪・被害救済制度について法施行後3年を目途とした検討等が求められているにもかかわらず、関連の法制度は、 16年に整備された景表法の課徴金制度と消費者裁判手続特例法の被害回復制度にとどまると指摘する。
 また、ジャ社事件を受けて21年6月に成立した改正預託法は販売預託商法を原則禁止とし、特商法をはじめとする関係法令には業務停止命令や刑事罰の規定があるものの、 これらの法制度に「法人格を消滅させて事業を完全に止めるための規定はない」として、法の網をすり抜ける新たな業態も含めて「破綻必至商法について、 横断的・一元的に対応する必要がある」と求める。

(続きは2023年6月8日号参照)