国センの2023年度事業 「社名公表」規定、運用体制の整備着手

国セン法42条で明文化、「必要に応じ公表」
「相談情報部」増員へ、事案は「情報提供委」で審査

 今年1月に施行された改正国民生活センター法で、悪質事業者の社名等を公表できる国センの権限が明文化された。法的な裏付けを得た国センは、 2023年度事業において公表規定の活用を目的とした取り組みに着手。担当部署の予算を増やすとともに、違法行為の調査等に携わる人員の採用を進める。 公表を検討すべき事案は、外部の有識者で構成する第三者委員会で審査される。過去十数年、〝休眠状態〟にあった「社名公表」規定の再始動の見通しを探る。

旧統一教会問題が契機

▲〝改正国セン法で明文化された
   「社名公表」規定の活用を目指し、
   担当部署の増員などに着手
   (写真は国センのWEBサイト)〝
 国セン法の改正は、旧統一教会問題にともない政府が霊感商法対策を迫られたことが契機。法案は昨年11月に閣議決定を受け、 悪質な献金等を規制する法人寄附不当勧誘防止法などとともに同12月、成立した。
 改正の一番のポイントは、内規どまりだった「社名公表」ルールの明文化。PIO―NETに入力された消費生活情報(主に消費者からの苦情)を整理・分析し、 その内容を公表できる権限を定めた第42条第2項において、「消費者の生命、身体、財産その他の重要な利益を保護するため特に必要がある」場合、 「事業者の名称その他の内閣府令で定める事項を公表することができる」と追加された(行政調査権限の規定はなし)。 省令では、公表できる情報に事業者の「商号」「代表者名」 「住所」「電話番号」などを指定。事業者が当事者である「消費者紛争の概要」や、該当する紛争の「予防及び防止に関し参考となる事項」も公表できる。 後者の「―参考となる事項」には、類似の消費者被害を生じている他の事業者の情報も含まれ得る。

過去にDS業界で猛威も休眠状態に

 かつて、国センによる社名公表は、ダイレクトセリング業界で猛威を振るい、90年代から2000年代初頭にかけて「サンフラワー」や「朝日ソーラー」、 「スカイビズ」が対象となった。しかしその後、大型事案の公表は影を潜める。10年に公表した転換社債商法の「アフリカントラスト」以降は事実上の休眠状態に入り、 具体的な手口の注意喚起にシフト。事業者名をともなう公表は、商品テストで安全性等の問題が確認された商品の販売事業者や、 ADR(裁判外紛争解決手続き)の和解不成立事案などで行われてきた。
 一方、改正国セン法に明文化されたことで、「社名公表」規定に再び脚光があたる形に。これの〝有効活用〟を視野に、国センの2023年度事業計画書は、 消費者庁をはじめとする法執行機関等との間で悪質事業者に関する「緊密な情報交換を行う」と記載するとともに、関係行政機関へ情報提供を行う際は「必要に応じ、 センター法第42条第2項に基づく事業者の名称等の公表にも取り組む」と盛り込んだ。

「個々の事案に応じて考える」

 社名公表の「必要」を迫られるケースは、どのような事案を想定しているのか。

(続きは2023年5月25日号参照)