ポーラの「アフターコロナ」戦略 販売チャネル横断で接点強化へ

リアル・デジタルの融合加速 多様化する価値観に対応

世の中の流れとして、いよいよ「アフターコロナ」に向けた動きが活発になってきた。この3年間、ワクチン接種や治療薬の開発に加え、 ニューノーマル生活が浸透したことで、新型コロナウイルスに対応した社会のあり方が構築されてきた。5月には、感染症法上の分類が2類から5類に移行し、 「アフターコロナ」への流れが加速するとみられる。ダイレクトセリング化粧品業界では、サロン等の店舗を基軸に、 オンラインでも顧客とコミュニケーションを図ったり、カウンセリングやセミナーなどのサービスを提供できるハイブリッド型の取り組みが増加した。 最大手のポーラでは、生活様式や価値観の変化に合わせて、多様なニーズに柔軟に対応する姿勢を強めている。

▲顧客IDを販売チャネル間で統一する
新サービス「ポーラ プレミアム パス」

顧客IDの横断 管理でアプローチ

  ポーラでは、コロナ禍の中で、主力の委託販売チャネルでの苦戦が続く。中でも、サロンビジネスの浸透に大きく貢献した「ポーラ・ザ・ビューティー」は、 コロナ禍前の2019年末は675店舗だったが、直近の2022年末では537店舗と、100店舗以上の減少と、後退が顕著だ。 コロナ禍によって直接の対面カウンセリング・販売が難しくなったことに加え、ユーザーの購買行動の変化によって、 既存の販売スタイルがニーズにマッチしなくなってきたことが背景にある。他方、ECやオンラインといったデジタル施策は好調であり、 オンライン経由の新規顧客獲得数は前年度比2ケタ増となった。現在、店舗でSNSによる情報発信を行っており、フォロワー数を伸ばしている。 オンラインで直接つながる顧客リストを拡充し、新規獲得に寄与しているという。既存顧客向けには来店促進の提案を強化し、エステ売上回復を図っている。
 こうした状況を踏まえ、ポーラは4月18日、店舗やECなど、これまで販売チャネルごとに保有していた顧客IDを共通化し、 購入前の顧客も対象とした新たなサービスプログラム「ポーラ プレミアム パス」を開始する。販売チャネルを横断するIDによって、 場所や販売チャネルを問わず、購入履歴や肌分析結果を確認することができる。顧客の気分、都合、価値観や、居住地域、悩み、肌の状態に合わせて、 個々人に寄り添ったサービス・接客を行うことが可能になるとしている。
 主なサービスとしては、前述の内容の加え、サンプル体験、キャンペーンやイベントなど、プレミアムパス会員限定のサービスを用意。 会員限定商品や先行予約なども案内する。また、利用に応じた接客やカウンセリングを行い、綿密なフォローを行う。このほかにも、 1年間の購入でたまった「マイル」に応じて、メンバー限定のギフトやイベント招待といった施策も展開するという。
▲最高峰ブランドのフックアイテム
   という側面をもつ「B.Aミルクフォーム」
 「ポーラ プレミアム パス」のスタートに合わせて、公式アプリ「POLAアプリ」もリニューアルする。 アプリからも「ポーラ プレミアム パス」の登録が可能になり、季節に合わせた美容情報や、日々の生活に有用なコンテンツ、店舗で受けられる肌分析データ、 キャンペーンのお知らせなど、アプリからポーラが提供する全サービスにアクセスできるようになる。また、新たなコンテンツとして、 「肌バンク」の提供を開始する。同サービスは、ポーラが保有する2020万件の肌データと、これから蓄積していく肌データを、 「会員の資産」と位置づけて活用していくことが目的。肌データをもとに、居住地の地域性、天候、 ライフスタイルに合わせてパーソナライズされた肌に関する有益な情報を、新しい形で順次発信していく予定だという。
 さらに、4月18日から公式コーポレートサイトと公式オンラインストアを統合し、新たなサイトにリニューアルも実施する。新公式サイトでは、 商品・企業情報、各種キャンペーンの情報、オンラインショッピング、店舗検索、会員情報の参照・変更までを公式サイト内で完結できるようになる。 これらの取り組みによって、コロナ禍でニーズが増加したオンライン関連の施策を、 ダイレクトセリングが得意としてきた対面販売などのリアル施策を有機的に結合させ、幅広い世代にブランドを訴求していく構えだ。

リアルイベントの強化も同時進行

 ポーラでは、ニューノーマル対応社会が定着した2022年頃からは、リアル施策のテコ入れにも力を入れている。

(続きは2023年4月6日号参照)