揺れる米MLMマーケット 業界が反発、FTCの報酬開示ルール見直し

予想報酬の裏付け、不開示ならFTC法違反
DSAは〝二重規制〟懸念、自主規制の成果も強調

   誤解を招いたり、明確な根拠のない“儲け話”の勧誘を規制するビジネス・オポチュニティ・ルールをめぐって、米MLMマーケットがざわついている。 昨年11月、ルールの対象にMLMを追加する方針を米FTC(連邦取引委員会)が示し、パブリックコメントを開始。 ルールに則った報酬情報の開示を怠ればFTC法に抵触することとなるため、米DSA(ダイレクトセリング協会) をはじめとする業界が反対の意見書を出す事態となっている。FTCが規制に前のめりな背景には、一昨年の最高裁判決により、 巨額の和解金で被害回復を図る従来の手法を封じられた件も指摘される。

契約7日以内の書面交付義務

▲ビジネス・オポチュニティ・ルールの
   適用対象にMLMを追加するFTCの方針
   に対して、米DSAは1月31日に提出した
   意見書(=写真)で反論
 米MLM業界の反発を生じているビジネス・オポチュニティ・ルール(以下BOR)は、2012年に現行版の運用が始まった。 一定の代金と引き換えに商品・サービスを通じた〝ビジネス・オポチュニティ〟を提案する事業者に対して、 実際に得られる報酬額や過去の参加者が取得した額を偽って説明する行為などを禁じるとともに、報酬に関する適切な情報の開示を求めている。
 このBORの根幹をなす規則の一つが書面交付義務。消費者が虚偽の〝儲け話〟で騙されることを防ぐため、 〝ビジネス・オポチュニティ〟への参加で得られると予想される報酬額や利益を事業者が説明する際、その裏付けとなるデータを書面で示す必要がある。
 書面に記載すべき事項には、キャンセル・返金規定の有無とその条件、過去3年間の〝ビジネス・オポチュニティ〟参加状況のリストなども指定。 これらの事項は書面1枚に収める必要があり、電子書面で交付する場合は印刷して保存可能な形式でなければならない。
 交付期限は、契約締結日か代金の支払いを受けた日のどちらか早いほうから7日以内。これら義務を履行したなかった場合、 不公正・欺瞞的な行為・慣行を禁止したFTC法第5条違反を問われることになる。

ルール見直し、2年前に表明

 昨年11月、このBORをめぐって事態が動き出した。
 規則の対象となる取引形態を、MLMを含むマネー・メイキング・オポチュニティやeコーマス・オポチュニティ、 コーチング・プログラムなどに拡大する考えをFTCが表明。同月に開催されたオープンミーティングにおいて、 4人のコミッショナーの満場一致でBORを見直す方針が確認され、パブリックコメントにかけられることが決まった。
 ミーティングではFTC側の発案者が「毎年、何万人もの消費者が詐欺的な〝ビジネス・オポチュニティ〟によって何千、何万ドルもの被害にあっている」 「1枚の文書で重要情報を事前に開示することによって、正しいリスクの評価ができるようになる」「欺瞞的な〝ビジネス・オポチュニティ〟 の提案者に責任を負わせ、違反した場合には民事罰を科すことができる」と、その意義を強調した。
 実は、BORの見直しは21年6月にも、コミッショナーの一人が声明の形で方針を示している。

(続きは2023年2月23日号参照)