NMI・宮澤政夫代表に聞く 「書面電子化」問われる政省令案 ㊤

利便性から「ほど遠い内容」、手続き「煩雑に」
スマホの電磁的交付、業界団体による指針「一案」

▲ネットワークマーケティング研究所 
  宮澤 政夫代表
 6月までに施行される改正特定商取引法の「書面電子化」規定をめぐり、電磁的交付の具体的な手続きなどを定めた政省令案が昨年11月末、 消費者庁から公表された。手続きの多くは、たたき台となった「特定商取引法等の契約書面等の電子化に関する検討会」(以下検討会)の報告書の提言を踏まえ、 事業者側に厳しい内容。このまま正式決定すれば、消費者にとっても利便性に乏しい電子化となる可能性が高い。 政省令案に指摘される課題や施行後の見通しについて、連鎖販売取引を中心に業界の課題を分析するネットワークマーケティング研究所(NMI、横浜市) の宮澤政夫代表に聞いた。
(インタビューはオンラインで1月12日実施)
スマホ可、事業者側の「巻き返し感じる」

  ―――政省令案の内容をどのように受け止めたか。
 「全体的な印象を述べると、電子化の主眼だった利便性からはほど遠い内容。消費者と事業者のどちらにも煩雑な手続きが必要とされている。 特商法が求める『消費者保護』の目的を理解はしているが、政省令案は、 訪問販売や連鎖販売取引といった大部分の取引類型の健全発展を促すものとは評価しがたい。具体的な文言についても、 それぞれの取引類型によって解釈が曖昧となりやすい部分が見受けられる。
 電子化が始まった後は、比較的簡易な手続きで良いことになっているオンライン完結型の特定継続的役務提供などの利用状況を検証してもらいたい。 そこで、消費者の利便性向上に資すると判断されたなら、訪販や連鎖にも簡易なルールの適用を求めたい」

―――政省令案の個別の論点について伺いたい。検討会の報告書は、消費者が使用する電子機器の画面サイズに「書面並みの一覧性(=面積)」を求め、 検討会で消費者庁の取引対策課長は下限を?インチ程度とする考えを述べていたが、省令案では「4.5インチ以上」と指定され、 スマートフォンしか利用しない消費者にも電磁的交付が可能となっている(訪販の場合は省令案第10条第1項第4号)。
 「政省令案の大部分は、報告書の提言を踏襲する内容。それだけに、画面サイズの部分だけ報告書から逸脱する内容だったことに驚いた。  そもそも今回の電子化の話は、特商法の主務官庁から出たものではなく、内閣府の規制改革推進会議で求められた『デジタル社会推進策』の一環として始まった。 『スマホを認めるかどうか』は重要な政策目標に含まれるはず。下限が4・5インチとされたことには、 内閣府と規制改革推進会議で意見を述べた事業者側の巻き返しを感じさせる」

―――パソコンやタブレットPCの画面サイズでなければ「書面並みの一覧性(=面積)」が保たれないとして、 パブリックコメントで消費者系団体から反対意見が相次いでいる。
 
 
(続きは2023年1月26日号参照)