国センの「社名公表」権限、強化へ DS業界への影響は

霊感商法対策で国セン法改正、権限を明記

処分の「前段階」で公表も、調査権は見送り

  国民生活センターの「社名公表」権限が強化される。旧統一教会問題にともなう霊感商法対策の一環で、国民生活センター法を改正。 権限を条文に明記し、内規に基づいていた運用に法的な裏付けを与える。国センによる社名公表は、 90年代~2000年代初頭にかけてダイレクトセリング系の事業者がターゲットとなり、行政処分や当局の逮捕に発展した事案も。 だが、その後は〝張子の虎〟扱いが続き、実質的な休眠状態にあった。権限の強化が、かつてのようなインパクトを業界にもたらす可能性はあるのか。

早ければ年内施行

 旧統一教会問題にともなう霊感商法対策を迫られている政府は、11月18日、国民生活センター法と消費者契約法の改正案を閣議決定した。 今臨時国会での成立を目指しており、成立した場合、公布から20日後の施行を予定する。会期は12月10日までのため、 早ければ年内に施行される見通しだ。悪質な献金等を規制する新法も策定を急ぐ。
 国セン法の主な改定ポイントは、社名公表権限やADR(裁判外紛争解決手続き)制度、適格消費者団体に対する支援措置の強化。 消契法は霊感商法取消権の強化と、取消権の行使期間を契約締結から10年に延長(現行は5年)することなどが柱となっている。
 このうち、国センによる社名公表の強化につながるのが、国セン法第42条の改正になる(表1参照)。
 国センによる情報の収集、公表について定めた第42条は、各地の消費生活センター等が「PIO―NET(消費生活相談データベース)」 に入力した消費生活情報(主に消費者からの苦情)を整理、分析して、国民生活の安定・向上を図るために必要と認める場合は、 「その結果を公表し、又は関係行政機関に対し、意見を付して当該結果を通知するものとする」と定めている。

PIO情報「一番把握」

 改正案は、この第42条に「消費者の生命、身体、財産その他の重要な利益を保護するため特に必要がある」と考えられる場合、 国センが「事業者の名称その他の内閣府令で定める事項を公表することができる」との規定を新たに追加。 内規どまりだった社名公表ルールに条文で法的根拠を与える。
 国センによる社名公表は、商品テストで安全性等の問題が確認された商品の販売事業者について、商品テスト部が定期的に実施。 だが、悪質商法による財産被害事案は近年、ほぼ例がない。消費者の「財産」を「保護」するために公表できる権限を条文に明記することで、 運用の転換につなげる。
 改正案や新法を策定するため消費者庁に急遽設置された法制検討室は、改正案の記者向け説明会で、 特定商取引法や消費者安全法などを使った同庁による行政処分が行われている中で国センの社名公表を強化する狙いについて、 「(国センが運用する)『PIO―NET』の情報は自分たち自身(=国セン)が一番、把握するところ」「行政処分に至る前段階において情報を出せれば、 被害防止につながる」と説明。


(続きは2022年12月1日号参照)