特商法の「書面電子化」 承諾の控え、概要書面は電磁的提供を“容認”

「確実な交付が重要」「起算点に関係しない」

〝一旦退去型〟の訪販 対面時の控え提供で電子化、可能に


〝控えの電磁的提供連鎖販売も対象

  来年6月までに施行される改正特定商取引法の「書面電子化」規定をめぐり、 政省令に定める運用ルールを議論していた消費者庁の「特定商取引法等の契約書面等の電子化に関する検討会」(以下検討会)が10月6日、 最終報告書を公表した。訪問販売、連鎖販売取引などの取引類型で申込・契約書面の電磁的交付を行う場合(図参照、報告書より抜粋)、 電子化の承諾の「控え」を紙の書面で提供させる内容に原案から変更はなかった一方、概要書面については電磁的な提供を〝容認〟。 訪問先から退去した後にオンラインで契約の申込を受ける訪販は、対面時に「控え」を紙で提供しておけば、 契約書面の電磁的交付は可能とする考え方も盛り込まれた。今後は「しかるべき周知期間が取れるよう速やかに政省令案の作成作業に入り、 パブリックコメント等の手続きを行う」(消費者庁取引対策課)ことになる。
 昨年7月に第1回会合を開催した検討会は、ワーキングチームで計19団体をヒアリング。その後、4度の会合を開いて、 7月28日の第5回会合で報告書の原案となる「イメージ」を審議していた。ここでの意見などを踏まえ、 文言の修正等を行った「報告書(案)」が10月3日~5日の書面会議にかけられ、正式に公表された(「報告書(案)」からの変更は無し)。
 「イメージ」からの大きな変更点の一つは、概要書面の電磁的交付に関する提言の追加だ。ヒアリングや検討会における議論は、 クーリング・オフの起算点と密接に関わる契約書面の電子化が中心となったこともあり、「イメージ」では概要書面関連の記載が一切なく、 第5回会合では言及の必要性を委員から指摘されていた。
 最終報告書は、申込・契約書面と同様に概要書面でも、消費者が電磁的交付に承諾した記録の「控え」を提供するべきとした一方、 その提供方法については「電磁的方法での提供を可能とすべきではないか」と記載。電磁的提供を可能とする取引類型は指定しておらず、 概要書面の交付義務がある特定継続的役務提供(以下特役)と連鎖販売取引、業務提供誘因販売取引の3取引類型を対象とした提言となる。

承諾の同時取得政省令で「検討」

 紙の書面による提供でなくともよい理由には、概要書面が「契約締結前に確実に交付されることの重要性」や 「クーリング・オフの起算点には関係しないこと」を説明。注釈の形で「特に隔地者間取引において概要書面の記載事項が『契約を締結しようとするとき』 に契約書面の記載事項よりも時間的に先んじて提供されることが、より確実に履行されることが期待される」とも触れ、 契約締結前交付の遵守に資するとの見解が盛り込まれた。取引対策課によれば、「イメージ」に対する委員の意見を踏まえて協議し、 今回の追記に至ったという。
 一方、今回の報告書では、「控え」の提供をいつまでに行う必要があるかにはタッチしていない。この点について取引対策課は、 申込・契約書面の「控え」は電子書面の電磁的提供に「至るまでに」提供する必要があることを踏まえ、「それとのパラレルで考えると、 その(=概要書面の)提供までに(控えを提供する)ということになる」とした。

(続きは2022年10月20日号参照)