ダイレクトセリング化粧品 多様化するニーズへの対応

ニューノーマル社会での変化

〝ジェンダー平等〟や〝おうち美容〟

  コロナ禍の中、ニューノーマルに対応した社会経済活動が定着したことによって、消費者の行動は大きく変化した。 化粧品市場では、在宅時間の増加等を受けて〝おうち美容〟への関心が高まり、スキンケアのニーズが高まった。 コロナ禍初期は、マスク生活が続いたことで口紅などのメークアイテムの売れ行きが落ち込んだが、 各社はマスクに色移りしづらいアイテムや、〝マスク映え〟するメーク品を開発することによって新たな需要喚起を図ってきた。 また、価値観の多様化を背景に、男性の間でも若年層を中心にスキンケア、ひいてはメークを行う動きもみられるようになってきた。 コロナ禍前より多様化したニーズには、細やかなアプローチが不可欠だ。
▲ホームケアでもサロンケアでも使える
「2WAYスキンケア」(シーボン)

配信プラットフォームと連携

 コロナ禍における化粧品市場の変化の1つとしてよく挙げられるのが、メンズコスメティックスに対する需要の増加だ。 富士経済がまとめた国内化粧品市場調査によると、メンズコスメティックスの市場規模は、2021年が前年比2.9%増の1550億円、 2022年が同2.1%増の1583億円見込みと、増加傾向にある。近年、若年層を中心にスキンケア、 ボディケアの意識が高まっていることを受け、メンズ整肌料やメンズボディケアが伸長している。 コロナ禍が始まった2020年ではわずかなに縮小したものの、2021年は新ブランド、新商品の投入が相次いだことから市場は活性化した。 2022年についても、スカルプケアやスキンケアなどの需要が増加しており、新商品の投入やプロモーション強化によって新規開拓が進んでいる。 コロナ禍の中、テレワークやオンライン会議が定着し、自身の容姿を確認する機会が増えたことで、中高年層においても、 ヘアケアやスキンケア意識が向上し、中高年層向けのブランドも好調だという。
 男性の肌への意識の変化を受けて、ポーラでは、パーソナライズドサービスブランド「アペックス」の肌分析データから、 2020年1月~2022年5月までに肌分析を体験した男性のデータ約1万件を集計し、比較を行った。その結果、 何かしらの肌悩みがある男性は、全体の95%にも上った。男性の肌悩みについては、年代によって悩みの内容が大きく変わる傾向があることが分かった。 例えば、10代~20代では「ニキビ・吹き出物」、30代では「乾燥」、40代では「シワ」、50代以降では「ハリ・たるみ」が悩みのトップとなった。 実際の肌状態は、年代が高くなるとともにニキビリスクは良化しニキビができづらくなるが、肌の色に関係するメラニン、糖化、 にごりの分析スコアが悪化傾向にあることが分かった。また、かゆみや赤みなどの肌トラブルを起こす要因となる、 化学的刺激やマイクロダスト(排気ガス、工場の煙、チリ・ホコリ等のPM2.5、黄砂、タバコの煙、 花粉等を示すポーラ独自の名称)に対する強さは、年代が高くなると共に良化する傾向にあった。
 このほか、男性の「目指す美しさ(目指す肌)」を分析した結果、年代によって異なるものの、①今ある肌悩みをなくし、 その状態を維持、②実年齢より若々しく、③「ツルすべモチぷる」肌になりたい、という回答が目立った。分析結果を踏まえ、 同社では、男性のスキンケアにおいても、UVケアが重要であるとして、1年を通して日焼け止めの使用を提案している。 UVケアの市場規模は、コロナ禍によって外出機会が減少したことで需要が落ち込んだが、回復傾向がみられる。 富士経済調査では、2021年が前年比3.3%増の568億円、2022年が同4.9%増の596億円の見込みで、 コロナ禍でマスク着用により敏感肌に対するニーズが高まったことを受けて、 低刺激処方や肌への負担が少ない使用感の商品が人気を集めるなど、UVケア分野においても需要の多様化が進んでいるようだ。

(続きは2022年10月13日号参照)