ダイレクトセリング化粧品 リアル・デジタル両軸が定着

異なるアプローチで顧客開拓

サロンへの導線確保が課題

 コロナ禍の中、3年目の夏を迎えたダイレクト化粧品市場では、サロンを軸としたリアル展開と、 ECなど新規顧客にアプローチしやすいチャネルとの融合を加速させている。サロンビジネスにおいても、安心して来店できる環境の整備や新メニュー、 オンラインカウンセリングなど新体制へシフトを進めているほか、SNSなどによる情報発信やアプリ連動などを駆使して、多様化した価値観に合わせ、 これまでとは異なる顧客層へのアプローチへの取組みを強めている。現在、国内では第7波が猛威を振るっており、 コロナ禍の収束にはまだ時間がかかる見通しであることから、ニューノーマルを前提としたビジネスモデルの構築は不可欠となっている。
コロナ禍の影響依然大きく

 表は、本紙が2021年7月に実施した「第72回ダイレクトセリング実施企業売上高ランキング調査」をベースに、 化粧品を主力商品とするダイレクトセリング(=DS)企業42社の直近実績をまとめたもの。42社のうち、ヤクルト本社は単体ベースの化粧品事業の売上高を 「前期売上高」として掲載している。直近業績の増減率をみると、「増収」が6社(前年同期は6社)、「横ばい」が17社(同15社)、「減収」が19社 (同20社)となった。増収、横ばい、減収いずれも前年同期と大きく変わっておらず、コロナ禍におけるビジネス環境が依然として厳しいことをうかがわせる。
 42社のうち、エステサロンや地域密着型の店舗といったビジネスモデルを展開している企業は19社となっており、約45%の企業がサロンビジネスを導入している。 対面型のカウンセリング販売として20年以上にわたって業界に浸透してきたサロンビジネスは、コロナ禍において、 「人と人の接触による感染リスク」という想定外の事態が発生したことで、一時は店舗休業を余儀なくされた。 現在は各サロンで十全な感染防止対策を講じて安全性を確保して営業を継続している。また、オンラインによる事前カウンセリングやバーチャルメーク、 ビデオ会議ツールを用いたイベントや講習など、デジタル・リアル双方のメリットを活用した施策が生まれており、 ニューノーマルに対応した体制での営業スタイルが一般的となった。サロンビジネスは、従来型訪販によるアプローチが困難な時代に、 立地に合わせた手法でカウンセリングやエステ、商品販売を行うことで「見える化」を進め、新規ユーザーの間口を広げることに寄与した。コロナ禍の中、 ビジネススタイルとともに、ユーザーの価値観も大きく変化したことから、サロンのあり方もまた新たなステップに入っていると言える。


(続きは2022年8月11日号参照)