特商法の政省令案の本格論戦スタート

「禁止行為」の設定、概ね賛同で一致

「第三者関与」、事業者側は年齢等に懸念

  来年6月までに施行される改正特定商取引法の「書面電子化」規定をめぐり、 政省令等における電磁的交付ルールを検討している消費者庁の「特定商取引法等の契約書面等の電子化に関する検討会」(以下検討会)で、 いよいよ本格的な論戦が始まった。初回のテーマに選ばれたのは「禁止行為」の設定と「第三者関与」の是非の二つ。前者は大筋で賛同を集めたところ、 相手が高齢者の場合に親族へも電子書面を送るなどとする後者は、事業者側の委員から年齢要件等への懸念が示された。 一方、電子化の“本丸”というべき承諾取得や交付手順、クーリング・オフ起算日などの重要テーマは次回以降へ持ち越す形に。過去の審議で、 厳格な要件をゆずらない消費者側の委員と簡易さを求める事業者側の委員に歩み寄りは見られておらず、今夏を目途としたルール策定に向け激論が予想される。

真意に基づかない承諾の誘導、禁止

  昨年7月に立ち上げられた検討会は、下部組織のワーキングチーム(以下WT)において今年3月までに計?団体・組織のヒアリングを実施。WTで得られた意見や提案をたたき台に、 4月21日の第2回会合で論点案を示していた。
 5月30日の第3回会合では、この論点案から「禁止行為」と「第三者関与」の2テーマをピックアップ。電磁的交付の要件とする是非や具体案について意見を交わした。
 このうち「禁止行為」は、消費者の承諾が電磁的交付の前提となることを踏まえ、真意に基づかない承諾に誘導する行為を事業者に禁じようというもの。 WTのヒアリングでは、電磁的交付にメリットを付けたり、逆に紙の書面にデメリットを付けることは「消費者の自由な意思表明を妨げる」(論点案より)ため禁止すべきとする意見が複数、 出ていた。
 そして、第3回会合では、消費者側の委員だけでなく事業者側の一部委員からも禁止行為を求める意見が出され、両サイドの見解が概ね一致を見せた。
訪販協の操作禁止案に委員から賛同

 ダイレクトセリング業界を代表する日本訪問販売協会の小田井正樹委員は、デジタルを苦手とする消費者のトラブル防止を念頭に、 紙の書面の有料化の禁止や電磁的交付にプレゼントを付けることの禁止、事業者が消費者に代わって消費者のスマートフォン等のデジタル機器を操作したり、 操作方法を教える行為の禁止を意見。
 ヒアリングでも述べていたアイデアに対して、複数の消費者側の委員から「事業者が手取り足取り教えることがあってはならない」「非常に納得感のある提案。 さすが現場をよく存じていると思う」と賛同が示された。全国消費生活相談員協会の増田悦子委員は、特典の付与に加えて割引きする行為の禁止も提案。 法定書面の重要性等を理解していない消費者が不利益を被る可能性に対して、事前の手当ての必要性を指摘した。
 他方、日本経済団体連合会の正木義久委員は、電磁的交付にメリットを求める消費者の要望に「寄り添う」ことが必要などとして、 特典の禁止や操作方法を教えることの禁止は慎重にすべき旨を意見。これに対して消費者側の委員から、ク・オフ起算日など消費者保護機能との関係から、 一般的な契約書等とは「同列に扱えない」とする意見が聞かれた。
見守り機能の維持など理由に

 もう一つのテーマに取り上げられた「第三者関与」は、承諾を得ようとする相手が高齢者などの場合、家族等の第三者にも電子書面を同時に提供したり、 第三者からも電磁的交付への承諾を取得する考え方になる。

(続きは2022年6月9日号参照)