書面交付の電子化 弁護士会が意見書攻勢

承諾取得…訪販・連鎖は「紙で」、事前説明なども提案

交付手続…消費者の閲覧を確認、起算日=確認日∴トも

 改正特定商取引法の政省令等における「書面電子化」運用ルールの策定作業が佳境を迎えるのを前に、 電磁的交付の要件厳格化を求める弁護士会から意見書が相次いでいる。2月〜5月上旬に7カ所の弁護士会が消費者相や消費者庁長官など関係各所へ提出。 不意打ち型、利益誘導型の取引は電磁的交付に対する消費者の同意を紙の書面で取得する案や、 消費者が電子書面を閲覧・保存したことの確認を事業者に求める案などを提示している。同趣旨の意見書は、 昨年の改正法案審議の際にも百数十カ所の消費者側団体から提出されており、今後さらに増えると見られる。
 意見書を提出した弁護士会は日本弁護士連合会、札幌弁護士会、栃木県弁護士会、京都弁護士会、兵庫県弁護士会、広島弁護士会、長崎弁護士会。 いずれも、今夏を目途とした意見集約を目指している消費者庁の「特定商取引法等の契約書面等の電子化に関する検討会」 (以下検討会、座長=河上正二東大名誉教授)において、書面交付規定に託された消費者保護機能を低下させないルールの策定を求めている。 検討会は5月30日の第3回会合より議論を本格化させる予定。
 提出団体のうち、検討会ワーキングチームのヒアリングでも意見を述べた日弁連(5月9日提出)は、消費者の承諾の取得をめぐり、 訪問販売や電話勧誘販売では不意打ち的・攻撃的な勧誘によって、また連鎖販売取引や業務提供誘引販売取引は利益獲得に目を奪われることで、 不本意もしくは不利な契約を締結しやすいと指摘。そのため、これら取引における承諾で紙の書面への署名と、控えの交付を求めている。
 その上で、メールによる電磁的な承諾を認める類型は、オンライン上で契約締結〜サービスの提供を行うオンライン完結型の特定継続的役務提に限る案を提唱。 承諾が真意に基づくことの立証責任を事業者が負うことも求めている。
 承諾に際して、事業者による事前の説明や消費者のデジタル適合性の確認義務も提案。説明事項には、紙の書面交付が原則となる旨や記載内容の重要性、 クーリング・オフ起算日との関係などをあげている。確認すべきとしている適合性は、スマートフォン等によるメールの送受信、 電子ファイルの閲覧・保存、WEBサイトへのログインなどが可能なスキル。

(続きは2022年5月26日号参照)