東京都ADR オンラインサロン業者を社名公表
東京都のADR(裁判外紛争処理)機関である「東京都消費者被害救済委員会」(会長=村千鶴子東京経済大現代法学部教授)は4月21日、 SNSを通じて「投資で稼げる」と誘われたオンラインサロンの契約トラブルについて、あっせん・調停の不調を理由に事業者名を公表した。 事業者は「株式会社Gracias」(以下G社、所在地・東京都新宿区西新宿、岡本明生代表)。報告書によれば昨年10月の付託後、 同委員会の協力要請に一切応じず、同委員会の示した和解案(クーリング・オフ成立による未返還既払い金の全額返金)も無視したため、 3月7日に手続を打ち切った。G社には契約する顧問弁護士がいたが、ADRでG社代理人の役目を受任しなかったという。
付託されたトラブルで申立人(20歳代後半・男性)は21年1月、利用するSNSにAなる人物からコメントをもらったことをきっかけに、 Aによる「〇〇プログラムを始めた」「社長(=岡本代表)についていくだけでこんなにも世界が変わる」「100万円稼いだ」等の投稿にひかれ、 Aから紹介されたG社社長のSNSにメッセージを送信。社長から「本気で人生変えたいなら会いに来て」 「1週間以内に来ないと契約しません」等の返信を受け、事務所に出向いて、「FXなどの売買のタイミングの情報をアプリに配信する。 同じタイミングで売買した人は全員利益が出る」等と説明され、総額110万円の契約を締結。うち80万円はクレジットカードで支払い、 残り30万円をATMで引き出し払った。
その後、消費生活センターに相談して2日後にクーリング・オフを申し出。カード支払い分はキャンセル扱いとなったが、 残り30万円が返金されなかったもの。
ADR手続きでは、一連の勧誘・契約行為が特定商取引法のアポイントメンセールスに該当すると判断。 社長のSNSメッセージで1週間以内の来訪を求めていたこと、申立人の本気を確かめる内容が含まれていたことなどから、 不意打ち性や心理的威圧が認められ、申立人が特商法上の「特定顧客」に当たるとみなした。
(続きは2022年5月12日号参照)