2021年度の特商法執行 延べ処分件数、異例の4割減

背景にコロナ禍、聞き取り調査に支障も 目立つ水回り修理、連鎖2社に大型処分
 2021年度(21年4月~22年3月)に行われた特定商取引法違反の行政処分は、延べ件数が前年度比4割減となったことが本紙のまとめで分かった。 より実態に近い事業者ベースの処分数も同程度のマイナス幅で、異例の減少は、新型コロナウイルス感染症の問題で被害者への聞き取り調査が難しさを増したことなどが大きいとみられる。 処分された取引類型は、水回り修理など〝暮らしのレスキュー〟関連の訪問販売が目立ったほか、連鎖販売では大型処分が相次いだ。

減少幅、東日本大震災の11年超える
 21年度の特商法処分の延べ総件数は81件で、前年度比は43%減(グラフ参照)。件数ベースは60件の減少となった。
 近年の処分は17年12月の改正特商法施行を境に増加。17~19年度と連続で増やしていたが、コロナ禍が始まった20年度で4年ぶりに減少。やはりコロナ禍が続いた21年度も減らした。
 改正法施行後の増加は、業務停止命令(連鎖販売等に対する取引等停止命令含む)や指示に加えて、新設された業務禁止命令の適用が始まった影響が大きく、 その後は、ほとんどの処分で停止命令と禁止命令がセットで出されている。また、禁止命令を除く処分数も増やし、19年度は前年度比28%増の110件が行われた。
 一方、2年連続のマイナスとなった21年度は、例を見ない減少幅を記録。延べ処分件数は、東日本大震災の影響を大きく受けた11年度にも大きく減らしたことがあったが、 この時の減少幅である34%を10ポイント上回った。
 また、延べ件数自体は16年度の62件や17年度の69件を上回ったものの、当時なかった業務禁止命令を除いた件数は52件となり、 実質的に件数ベースでも過去10年でもっとも少なかった。

国54%減、一斉処分考慮しても37%減
 執行主体別に見た延べ処分数は、国(消費者庁と各経済産業局、沖縄総合事務局)が41件で前年度比は54%減、都道府県が40件で23%減。国による処分数の減少が全体に大きく影響した。
 実態に近い事業者ベースの処分数は国が10件、都道府県が14件で、前年度比は国が17件の減少、都道府県が3件の減少となった(事業者ベースの処分数は、 業務停止命令・指示・業務禁止命令の同時適用、単一事業者が行う複数の取引の処分、事実上一体となって活動していた複数の事業者の処分など、処分の重複カウントを除いて算出。 国と都道府県の同時処分は各執行主体に重複カウント)。
 延べ処分数と事業者ベースの処分数を大きく減らした国は、前年度において、Amazonで偽のブランドバッグなどを出品していた13事業者に対する一斉処分を実施。 この一斉処分をまとめてカウントした場合、国の延べ処分数は前年度比で37%減、事業者ベースの処分数は5件減だった。

処分都道県は10カ所埼玉、19年ぶりゼロ
 21年度に処分を行った都道府県は10カ所で、前年度から2カ所の減少。7カ所にとどまった03年度以来の少なさとなった。

(続きは2022年4月14日号参照)