トップ インタビュー 不透明な時代のBCPとDX推進
ダイレクトセリング(=DS)業界は、この2年でリアル・デジタル双方を駆使した取り組みによって、新たなビジネスモデルの構築が進んだ。 他方で、社会に目を向けると、コロナ禍だけでなく、世界情勢の不安定さなど不透明さが増している。 予測困難な災害等に対応するBCP(事業継続計画)の策定は待ったなしの状況にある。42年にわたり、 600社以上のMLM企業にシステム支援等を行ってきた日本ネットワークシステムズ(本社・宮崎県宮崎市)の髙山隆憲社長に、 不安定な時代のDX推進とBCPのあり方について聞いた。
▲日本ネットワークシステムズ
代表取締役社長 髙山 隆憲 氏
代表取締役社長 髙山 隆憲 氏
―――「ウィズコロナ」から、「アフターコロナ」へのシフトも見え始めている現在、DS業界でもDX推進による業務改善が進みました。 一方、コロナ禍に加え、ロシアによるウクライナ侵攻など、社会全体が不透明な状況が続いています。日本国内ではBCP(事業継続計画)の策定が急務となっていますが、 昨今の情勢を踏まえれば、もはや待ったなし≠ニ言わざるを得ません。
「東日本大震災が発生して今年で11年が経過しましたが、福島県沖で3月16日深夜に発生したM7.4の地震は東北など広範囲に強い揺れを引き起こしました。 また、昨年10月には千葉県北西部で発生した地震で埼玉県と東京都で最大震度5強を観測し、多くの帰宅困難者で大混乱となりました。 今後30年以内に南関東でマグニチュード7クラスの地震が起きる確率は70%と推定され、南海トラフ地震については政府の地震調査委員会が1月に、 マグニチュード8〜9クラスの30年以内の発生確率を90%に引き上げました。それらの巨大地震に備えBCPとしても弊社が活用されるようになっています。 お客様からお預かりしているデータは、弊社内と遠隔地(IBMクラウド)にバックアップを取っています」
―――御社では、DS企業のDX推進のサポートも行っています。
「DXとは、データとデジタル技術によって商品やビジネス、業務、企業文化等の変革を成し遂げるものであり、 その目的は競争力の維持・獲得・強化を果たすことにあります。しかし、IT人材が不足している昨今、 最新の技術に対応することが難しいレガシーシステムの保守・運用に多くの人的リソースが割かれていることが指摘されています。最初にまとまった投資が必要である点は、 DX化を進める際に、企業が抱える課題のひとつです」
―――DS業界では、古いシステムを更新できていないケースも散見されます。
「レガシーシステムを抱えている企業は、システムのモダナイゼーションに取り組む必要があります。DXにふさわしいIT基盤については、 オンプレミスとクラウドのハイブリッドやオールクラウド等が考えられますが、いずれにしろ新たな投資が必要になることは間違いありません」
―――そのような企業に対して、どのような提案を行っているのでしょうか。
「弊社システムは、『プライベートクラウド』としてご利用いただいております。オンプレミスは自社で構築するため、システムを柔軟にカスタマイズしやすく、 自社システムと連携しやすいというメリットがあります。また、セキュリティ面でも自社のネットワーク内でシステムを動かすため、第三者が入りにくく、 安全性が高いこともメリットの1つに数えられます。2000年代半ば以降、クラウドサービスが浸透するにつれ、 オンプレミスからクラウドへ移行する傾向が強くなりました。しかし最近では、カスタム性の高さなどからオンプレミスの良さも見直されております。 弊社はMLM業界に特化し、更にお客様からのご要望にも柔軟に対応するために、自社内にオンプレミスでクラウド環境を構築しております。 お客様はサーバ等の初期投資の必要がなく毎月の利用料のみで弊社システムを『プライベートクラウド』としてご利用頂いております」
「弊社は、昨年の4月から1億円に近い設備投資をし、ネットワークも含めた統合インフラで、よりシンプルな管理と拡張性に優れた 『Cisco HyperFlex System』を導入したので、処理スピードが約2倍速くなりました。セキュリティに関しては、 ファイヤーウォールやSSL装置などのハードウエア、ウィルス対策ソフトやアクセスログ解析ツールなどのソフトウエアを導入しており、 ネットワークからのデータ流出対策を行っています。さらに、サーバについては仮想化技術を導入し、ネットワーク機器においても代替機を用意し、 万が一のハードウエア障害に対しても早急に復旧できる体制を整えています」
▲最新の設備と経験豊富なスタッフでDX推進をサポート
―――時代の不透明性が増しています。今後のBCPのあり方は。
「BCPの観点から、DXの有用性を捉えることもできます。新型コロナウイルス感染症の拡大は、インターネットとデジタル技術を活用することが事業継続のカギとなり、 テレワークは緊急時に事業や業務を継続する手段としても有効です。コロナ禍によりテレワークが普及しましたが、弊社は2001年のASPサービスを導入時より、 主宰企業様がどこからでも安全・快適にデータにアクセスできるシステムを構築しています。システム、およびデータは弊社内のサーバ上にあるため、 普段から主宰企業様は弊社にアクセスしてリモートで作業して頂いていることになります」
―――コロナ禍の2年で、働き方の多様化が進みました。
「リモート時代の到来によって主宰企業には、社員がテレワーク可能な環境を構築することが求められます。また、イベントのWeb開催など、 リモート化して会員の活動を支援することも必要です。従来のようなフェイスツーフェイス主体の活動が困難となり、テレビ会議システムなどのデジタルツールを使って、 会員と円滑なコミュニケーションを図れる体制構築が急務です」
―――リアル、デジタル双方の取り組みが不可欠です。
「弊社のシステムを用いれば、今回のようなコロナ禍や、将来的に大規模災害が発生し、会社に出社できない状態になった場合でも、 アクセス元を自宅や避難先等に変更して頂くだけで、社内に居る時と同様の作業が可能です。 実際に、コロナ禍の中でも弊社のお客様は業務を停止する事なく継続する事ができました。BCP(事業継続計画)の策定は、主宰企業の義務と言えます。 私たちはこれからもお客様に満足いただける『安心・安全・信頼』のサービスを心がけ、DS業界、MLM業界の健全な発展を通して社会に貢献して参ります」