訪販協「救済基金」とジャパンライフ事件 給付審査3月末スタート、夏までに結論
「ジャパンライフ(破産手続き中)」事件の被害者から膨大な数の利用申請を受けている日本訪問販売協会の「訪問販売消費者救済基金(以下救済基金)」。 初申請から4年を経過しても給付時期の目途が立っていなかったところ、3月末より、受理した申請の審査が始まることが分かった。 早ければ10月の理事会で給付の決議が行われる可能性がある一方、協会は、ジャ社の破産配当が確定しなければ給付しない方針。 被害者の申請を代行した被害弁護団は、この方針を批判するとともに、不受理とされた案件で今後の対応の検討を進めている。
09年に始まった「救済基金(チャート図参照)」は、協会の正会員と訪問販売で契約を結んだ消費者が正当な理由なく返金を受けられない場合、 1契約あたり100万円を上限に協会が返金(給付)する仕組み。返金の原資として会員から集めた積立金は約1億1603万円にのぼる(21年3月末時点)。
正会員が退会していても、退会前に訪販で締結した契約なら給付の対象となるため、17年末のジャ社破たん後、 同社が退会する15年10月までに契約を結んでいた被害者の利用申請が相次いだ。
その後、20年1月をもってジャ社被害者の申請を締め切ると協会が告知したことを受け、19年末〜20年初頭にも大量の申請が殺到。 協会事務局は、これまでに受けた申請の総数を明らかにしていないが、関係筋の話を総合すると数千件に及ぶとみられる。
このような件数の多さやレンタルオーナー商法の複雑さ、受理の可否の判断に必要な添付物の欠如・不足などを理由として、申請案件の仕分けが進まず、 審査に入れていなかった。協会事務局が「救済基金」関連の事務を通常の人員体制の範囲で行うことも遅延の一因となってきた。
「審査委員会」は昨年11月と12月にも開催。ここでは「予備審査みたいな形」で検討を行っていたが、その後、 事務局内で申請の仕分けに目途がついたことから、正式に審査を依頼したという。
審査のための会合は原則、対面形式で複数回の実施を計画。「夏くらいまでに何らかの結果を出したい」とする。このため、 「審査委員会」で給付が適当と判断された案件は、早ければ10月の理事会で正式な決議を受ける可能性が出てきた(協会事務局によれば、 給付の可否に総会の決議は必要とされない)。
一方、審査を付託した案件の数について、協会事務局は「まだ公表できない」と説明。被害者には数千〜数億円を支払ったケースが珍しくなかったところ、 案件全体の被害額も「まだ分からない」とした。
「救済基金」の積立金は、残額が基金スタート時の金額の60%にあたる5112万円を下回った場合、原資を補填するルールを定めている。 従って、給付総額が現在の積立金から5112万円を差し引いた額約6491万円を上回った場合、正会員から積立金の再徴収が行われる可能性が浮上するが、 この懸念の払しょくは「審査委員会」の判断を待たざるを得ない。
(続きは2022年3月24日号参照)