改正特商法の「書面交付電子化」 〝前半戦〟終え、事業者側の守勢否めず

消費者庁の国会答弁、消費者サイドの追い風に要件案に
 承諾過程の録音、適合性確認、受信・開封確認も

 2023年春~夏の施行が見込まれている改正特定商取引法の「書面電子化」。政省令等で定める電磁的交付ルールのあり方をめぐり、 関係先をヒアリングしてきた消費者庁「特定商取引法等の契約書面等の電子化に関する検討会」のワーキングチーム(以下WT)が、 11月までに計12団体・組織からの聞き取りを終えた。ここで改めて浮き彫りとなったのが、電子化のメリットを損なわない簡易な手続きを求める事業者サイドの守勢。 数に勝る消費者サイドは、同庁が国会で答弁した要件案も踏まえ、紙による承諾の取得や重要事項の説明義務、 メールで送信した電子書面の受け取り確認など厳しい提案を突き付けており、オンライン完結型の一部取引形態を除いて不利な運用を迫られかねない。


紙による承諾取得 消費者団体も提案

 表は、8月~11月に計4回が行われたWTのヒアリングにおける主な意見だ。消費者サイドは8カ所、事業者サイドは3カ所の団体・組織が、 それぞれの立場から電子化ルールのあるべき姿を訴えてきた。
 今後はさらに7カ所のヒアリングが予定されており、いわば〝前半戦〟を終えた段階。しかし、現時点の状況としては、厳しい要件案を次々に繰り出し、 数でも勝る消費者サイドに対して事業者サイドが押されている感が否めない。
 消費者サイドに追い風を吹かせている大きな理由の一つが、政省令等で電子化ルールを定める消費者庁自身が、厳格な運用のアイデアを示してきたこと。
 特商法改正案を審議した4~6月の国会で、参考人として出席した高田潔次長をはじめとする同庁幹部は、電磁的交付の前提となる消費者の承諾について、 施行から当面の間、訪問販売や電話勧誘販売などのオンライン〝非〟完結型の取引では紙で承諾を取得させる考えなどを繰り返し述べてきた。
 この国会答弁を踏まえ、ヒアリングでも複数の消費者団体・組織が紙による承諾取得と、その控えを渡すことを提案。メールによる承諾の取得を認める場合でも、 対面の勧誘や不意打ち型・利益誘引型の勧誘は、原則として紙で取得させるべき旨を述べ、訪問販売等のダイレクトセリング業態をけん制する。

事業者側は電磁的取得など意見

 これに対して事業者サイドは、9月の第2回WTに出席した日本訪問販売協会(以下訪販協)が、訪問販売における承諾取得は販売員が携帯端末を用いて、 ①その場で消費者からメールアドレスを教えてもらい②消費者の端末にメールフォームのURLを送信し③メールフォームで承諾の送信を受けるという3ステップの 〝メールフォーム方式〟を提案。電磁的手法による取得を可能とし、各ステップを踏むことができないデジタルに不慣れな消費者には電磁的交付が行われるリスクもないとして、 事業者と消費者の双方にメリットがあると訴えた。
 他の2団体・組織は、新経済連盟が、オンライン英会話レッスンなどのオンライン完結型の取引類型において、申込時の画面上で承諾の欄にチェックを入れてもらったり、 店舗受け取りや郵送などの交付方法も選べるボタンを用意するアイデアを提案。日本経済団体連合会は、そもそも論として、 承諾に関する消費者の真意についてアナログの書面を用いた契約以上の立証を求めるのは過剰な要求と意見した。

書面の重要性の説明義務、要求

 一方の消費者サイドは、紙で承諾を取得させるべきとする意見に加えて、 パソコン等の画面で電磁的交付への同意をチェックしてもらう方法は原則認めるべきでないという意見が多勢。
 また、国会で消費者庁幹部が、承諾を取る際に契約書面の重要性を明示的に示すことを検討すべき旨を述べたことを踏まえ、〝紙による交付が原則〟 〝契約内容に関する重要事項が記載されている〟〝書面の受領日がクーリング・オフの起算日になる〟ことなどの説明義務を新たに課すことも求める。
 さらに、同庁の答弁内容を超えるアイデアも。
(続きは2021年12月16日号参照)