ダイレクトセリング化粧品 ニューノーマル対応の付加価値施策

コロナ禍下での「次の一手」利便性や〝おうち美容〟に着目

 2021年も残り数週間となった。コロナ禍下での社会経済活動は2年にも及んでいる。ワクチン接種などの進展で新規感染者数・重症者数ともに目に見えるように減少し、 にわかに活気づいてきたところで、再び変異株の脅威が懸念されている。化粧品市場では、需要が急増したECチャネルの強化がみられたほか、 サロンを展開している企業では、新メニューやオンラインサービスを導入して新規ニーズを掘り起こす動きが活性化した。感染拡大が本格化した昨年初頭頃は、 オンラインサービスは画期的な施策であったが、現在では一般化しつつある。各社は、さらなるニューノーマルに対応したプラスアルファの施策を講じて、 差別化を図っている。


▲公式アプリの提供を開始(ポーラ)
オンライン施策と サロンメニュー強化

 ポーラは、昨年6月からポーラショップなどでオンラインカウンセリングを導入しており、現在は月間2000人以上の顧客がサービスを利用しているという。 コロナ禍で顧客への施術が困難となり、営業活動は店頭での物販など最小限にとどめた一方、ニューノーマルに対応したサロン施策としてスタートしたのが、 オンラインによるカウンセリングサービスだ。対面で行ってきたカウンセリングをオンライン化し、スタッフと顧客の接触時間を減らすことが出来るシステムは、 現在、約1600のショップで活用されている。
 オンラインカウンセリングでは、顧客とビューティーディレクターとの1対1のカウンセリングを行うほか、複数名が参加できるワークショップ、 新製品の使い方や季節ごとの美容法、家でできるマッサージなどを紹介するオンラインレッスンも提供している。 現在は、顧客同士のコミュニケーションも取り入れたモニター座談会形式での利用も行っており、オンラインカウンセリングおよびワークショップの満足度は90%以上、 知人・友人への推奨度は80%と、好評を博している。
 コロナ禍の中、感染防止と顧客フォローを目的に始まったオンライン施策だが、感染予防対策を目的とした店舗の滞在時間短縮だけでなく、 さまざまな事情でなかなか外出できない女性でも利用しやすいなど、利便性向上にも寄与している。同社は「オンライン強化研究会」で、店舗同士での情報交換やアドバイス、 オンライン接客スキル向上のための研修、オンライン接客コンテストを実施してフィードバックを行うなど、接客技術・体験価値向上を進めている。 また、公式スマートフォンアプリ「PORTAL by POLA」を11月から提供を開始した。アプリでは、ポーラの研究知見が裏付ける情報をベースに、地域や季節、 肌悩みなどに応じた美容情報、多様な視点から身の回りのさまざまな物事の本質を探るライフスタイル、アートやカルチャーなど計100以上のコンテンツを配信する。 また、店舗の検索、お気に入り店舗で実施をしているキャンペーンやイベントなどの情報発信・申し込みなど、店舗体験への利便性も高める。 ダウンロード時に地域や肌悩み、年齢といった6 項目を入力することで、手軽に美容・健康に関する知識を入手し、関心を深めることができる。 アプリによって、「会えない時でも出会いとつながりの可能性を広げ、日々豊かな時間を育み、喜びを感じて欲しい」という想いを伝えるという。
 このほか、2022年1月にはエステサービスを刷新する。最高峰美容液「B.AグランラグゼⅢ」と連動した「〈ハイグレードプログラム〉エイジングケア」と、 30分という短時間で乾燥・くすみのケアを行えるフェイシャルエステ「クリア&モイスト」を新たに導入し、このうち、 「〈ハイグレードプログラム〉エイジングケア」を先行発売し、高付加価値のサービスとして訴求。 コロナ禍で変化した顧客のニーズに合わせたスタイルでエステサービスを提供するという。

動画配信や自宅ケア商品で差別化

 ナリス化粧品では、ニューノーマルに対応したビジネス環境支援の強化を行っている。2021年7月7日、兵庫県三木市の兵庫工場敷地内の研修センターをリニューアル。 メーキャップアーティストやエステティシャンなどの専門技術をもつ社員が、ライブ配信や動画配信を行う「発信スタジオ」を新設し、 オンラインで情報発信などを行える設備を整えた。動画配信の一例としては、ポイントメーキャッブランド「ヴィータ」では、 トップメーキャップアーティストの佐々木誠二氏が監修した、アイライナーやマスカラ、アイブロウなどの使い方に関する動画をユーチューブで公開しており、 メークアドバイスを行っている。
▲〝おうち美容〟需要に対応した
「3Dスフィア」(ナリス化粧品)
 施術やお手入れに関する施策としては、2021年1月21日から、自宅に1カ月分のスキンケアセットが届き、 専属の美容部員がオンラインでカウンセリングを行う「オンラインスキンケアモニター」のサービスを行っている。 基幹スキンケアブランド「ルクエ」6点セット(1カ月分)やマッサージングパック(10回分)、ファンデーション(20回分)が送られ、 専属の美容部員が28日間で4回のカウンセリングと、正しいお手入れ方法をアドバイスする。同社は、オンラインによるカウンセリングを、 「対面でできないから、仕方なくオンラインで行う」とは捉えず、ひと目を気にせず、顧客の日常と同じ目線で行うことができるため、 より納得度の高い内容を提供できるサービスと位置づけている。肌の生まれ変わりに合わせた?日間という期間で最適なスキンケアを提案する 「オンラインスキンケアモニター」は、外出せずに自宅でカウンセリングやレッスンを受けられるサービスとして、新たなニーズ掘り起こしにも寄与している。
 商品政策では、前出の「ヴィータ」をはじめ、各ブランドから新商品を投入するとともに、 コロナ禍で需要が増えている〝おうち美容〟に対応したアイテムの強化にも力を入れている。10月21日には、 自宅でもサロン同様の美容体験を提供する「3Dスフィア」ブランドをリニューアルした。2018年にサロン専売品として発売を開始し、 約3年で40万セット超を販売した人気ブランドで、美容液、薬用シワ改善美容液、マスクの3ステップで、〝自宅にいながらサロン級〟のケアを提供する。 今回のリニューアルでは、従来の美容液を医薬部外品として刷新。シワ改善を実現し、〝おうち美容〟の満足度向上を図った。
(続きは2021年12月9日号参照)