シリーズ・特商法改正 脅威を増す「業務禁止命令」

命令出せる「役員」、対象期間を「1年」に
子会社やオーナー会社での同業従事も禁止

 7月、送り付け商法の規制を強化した〝1段目〟の改正事項が施行された特定商取引法。今後は、施行時期を再来年に先送りされた書面交付電子化規定を除く、 残りの改正事項が来年6月までに〝2段目〟として施行されることになる。ここで注目されるのが法執行の強化。 特に、5年前の前回改正で新設された、処分対象業務の遂行に主導的役割を果たした人物をターゲットとする「業務禁止命令」は、 対象期間と命令の及ぶ範囲が大幅に拡大されることから、警戒を要する。10月に公表された政省令案も踏まえ、見通しを探る。
 
業務停止命令上回る

 特定商取引法の前回の改正は2016年6月。審議の紛糾した不招請勧誘規制が見送られた一方、法執行・罰則を強化する多数の改正が行われた。 業務禁止命令の新設、業務停止期間の最大24カ月への延長、報告徴収・立入検査の権限強化、公示送達の導入、懲役・罰金の上限引き上げなどだ。 そして、これらの中でもっとも執行実績を積まれてきたのが業務禁止命令になる。
 前回の改正法は17年12月に施行。その後、国と都道府県から出された業務禁止命令の件数は、18年度=45件、19年度=66件、 20年度=43件、21年度=18件(10月末時点)。 各年度に出された業務停止命令の件数を上回ってきた。これは、ほとんどの禁止命令が停止命令とセットで出されることに加え、 処分企業の代表取締役と営業部長といった具合に1社あたり複数の人物をターゲットとするケースが珍しくないことが関係する。

旧法の「60日」を拡張

 来年6月までに施行される〝2段目〟の改正事項では、この業務禁止命令の威力がさらに強められる。一点目が、命令できる「役員」とその「使用人」の対象期間の拡大だ。
 旧特商法は、業務禁止命令を出そうとする日から「60日以内」に「役員」等だった人物に、同命令を出すことができると定めていた。 これを改正法は「1年以内」に見直し、「役員」等に含まれる人物の対象期間を伸ばした(表参照)。
 このため、〝2段目〟の施行後は、処分日から遡って1年以内に「役員」等だったとみなされた人物は、業務禁止命令の対象となる可能性がある。 ほとんどの行政処分は、報告徴収や立入検査が行われてから数カ月以内、長くて1年以内に行われてきた。 したがって、仮に、検査等を受けた会社が「役員」等の入れ替えなどに着手したとしても、業務禁止命令を免れることは困難になる。
 二点目は、業務禁止命令を受けた「役員」等が、処分された会社だけでなく既存の関係会社等で同じ業務を続けることも禁止する改正になる。 このため改正法は、「特定関係法人」と呼ぶ新たなカテゴリーを追加(表参照)。10月26日に公表した政省令案で、「特定関係法人」に含まれる関係会社等を具体的に示した。
(続きは2021年11月18日号参照)