NMI宮澤代表に聞く 混迷する「書面交付電子化」、今後の行方は

「まずは、電磁的交付できる道筋を」消費者ニーズ「データ取得し、議論のたたき台に」
▲ネットワークマーケティング研究所 
  宮澤 政夫代表
 前回(8月5日号5面)に続き、改正特定商取引法における「書面交付の電子化」の要件の見通しや、 業界に求められる対応などをネットワークマーケティング研究所(NMI)の宮澤政夫代表に聞いた。
(インタビューは 7月9日実施)

承諾の前提要件「反論理由ない」

  ―――改正案を審議した国会では、議員の質疑に対する消費者庁の答弁の形で、消費者の承諾のあり方をはじめ とする電磁的交付の要件を厳格化するため、複数のアイデアが同庁から示された。
 「特商法の書面がも つ意義からすると当然 のことと思う。その有 効性や実効性に対する 疑問はあっても、それ 自体を否定する声はな かったのではないか」

  ―――同庁は、電磁的交付に対して消費者の承諾を取得する際、前提として 「口頭や電話だけで得た承諾は認めない」「承諾の確認に消費者から明示的に返答、 返信がなければ承諾があったとみなさない」「承諾を取る際、 承諾による効果やメール等で送付される内容を明示的に示す必要がある」との考え方を示した。
 「特に反論する理由はない。承諾を得たこ との立証責任が事業者にあることや、口頭等 だけで承諾を得た電磁的交付は書面の交付に あたらないためクーリング・オフが可能で交 付義務違反の行政処分、刑事罰の対象になることも示された。 これらは当然と思う」

紙で承諾取得「そこまで必要か」

  ―――承諾の取得に関して、オンラインで完結する取引はメールによる取得を認めるが、 それ以外の分野は当面紙で承諾を得ることを求めるアイデアが示され、物議をかもしている。
 「業界にとって大事 な部分。『オンライン で完結する』『紙で承 諾を得る』という説明 が、具体的にどういう ことを指すのか。例え ば、承諾を得る用紙の フォーマットまで事細 かに指定されるのか、 あるいは事業者の裁量 に任せられるのか。今 後、政省令を定める過 程で細部が明らかにな っていくと思う」

  ―――承諾を紙で取得させることの賛否は。
 「特商法のデジタル 化を本気でやるなら、 電磁的交付という選択 肢は用意されるべき。 が、その際に諸々の規 制が必要となることも 受け入れざるを得な い。紙で取得させると いう考え方には、そこ までやらなければいけ ないのかという気持ち はある。ただ、ようや く電子化が成立したの だから、まずは、法令 に従う限り電磁的交付 をできる道筋をつけて ほしいと思う」

見守り機能£ハ販でも検討を

  ―――電磁的交付の方法で、メールに貼り付けたURLからダウンロードさせることは認めない考えを示した。
 「デジタルのメリッ トを損なうため、もっ と柔軟にやってほしい と事業者が思うのはお かしくない。私も諸手 で賛成はしない」

  ―――電磁的交付の相手が高齢者の場合、家族などの第三者も承諾に関与させる考えが示された。
 「実際にやるとなる と難しいとは思うが、 反対する理由はない。 むしろ大事だろう。
 一つ気にかかったの は、紙の書面がもつ 見守り機能≠ェ強調 されたこと。それを言 うなら、訪問販売や連 鎖販売より相談件数が 多く、高齢者の利用も 増えている通信販売も 俎上にあがるのが自 然。現行法で通販に書 面の交付義務はない。 今後も義務付けないな ら、書面に代わる見守 りの機能をもつ規制を 通販で検討すべきでは ないか」

  ―――ほかに、関心を引いた答弁は。

(続きは2021年8月12日号参照)