NMI宮澤代表に聞く 混迷する「書面交付電子化」、今後の行方は㊤
宮澤 政夫代表
(インタビューはZOOMで7月9日実施)
―――昨年11月に、内 閣府の規制改革推進会 議ワーキンググループ (以下WG)で浮上し た「書面交付の電子化」 案が急遽、改正特商法 に盛り込まれ、6月の 国会で成立、公布され た。一連の経緯に対す る所感を伺いたい。
「疑問に感じた点が 2つある。一つは、電 子化を必要とする背景 の説明。もう一つは、 紙の書面の交付義務を もつ6取引形態すべて 同時に電子化を行った 理由。後者については、 法案を審議した国会で 理解の及ぶ説明があっ たが、前者は今も明確 でない」
―――電子化の背景説明について。どう明確でないと考えるか。
「消費者庁は長年に わたって、紙の書面を PDF等の電子データ に置き換えることに消 極的だった。消費者庁 の中で、電子化の可能 性や必要性を検討して いたとは思えない。 昨年8月、『特定商 取引法及び預託法の制 度の在り方に関する検 討委員会』(以下検討 委員会)がまとめた報 告書にも、該当する記 載は見当たらない。検 討委員会の座長だった 河上正二氏は、参考人 として呼ばれた国会 で、電子化の件は検討 委員会で『全く検討さ れていません』と証言 した(※1)。少なく とも、この時点まで消 費者庁に電子化をやる つもりはなかったと思 う」
―――が、11月のWGで電子化の方針が表明された。
「消費者庁の国会答 弁によれば、その約1 月前の10月6日に、内 閣府の規制改革推進会 議・規制改革推進室か ら、特定継続的役務提 供(以下特役)に関す る書面の見直しの検討 の要請を受け、その後、 11月2日にも、同じ推 進室から各省庁の所管 法全ての民民手続につ いて検討の依頼を受 け、庁内で電子化の検 討に入ったという。し かし、電子化が必要と いう背景の説明として は不十分に思う」
―――どのような理由でか。
「改正法案が国会に 提出されたのは3月5 日。内閣府から特益の 書面見直しを求められ て、5カ月後のこと。 なぜ、そこまで急がな ければならなかったの か。今も、ほとんど説 明されてない。 この点は国会でも野 党議員に追及され、消 費者庁の高田潔次長は 『この十年間でデジタ ルに関して非常に社会 が進んだ、いろいろな スマホ等々の使用率も 上がっている』としか 答えられず、議員から 糾弾に近い反論を受け ている(※2)」
―――電子化のような大型の改正は、有識者の集まりを立ち上げ、そこでの議論を踏まえ法案を作成するのが通 例だった。
「検討委員会でも検 討されず、ごく短期間 に消費者庁の内部だけ で方針が定まったよう に見える。過去に例の ない、このようなやり 方をすれば消費者団体 が反発するのは百も承 知だったはず。全会一 致が原則だった法案採 決は野党が反対に回 り、与党の力で政府が 押し切った。前例を覆 しても急いだのは何か 理由があるはずだが、 国会審議の限りでは判 然としない。国民の一 人として明らかになっ てほしいと思う」
―――もう一つの疑問について伺いたい。当初は特役のみの電子化と見られていたが、訪 問販売や連鎖販売など6形態すべて電子化の対象とされた。
「WGで電子化の事 例にあげられたのはオ ンライン英会話教室だ った。PIOーNET 相談件数の多い訪販や 電話勧誘、事業勧誘性 の濃い連鎖の電子化は 見送られるだろうと、 そう考えていた。それ だけに、1月の消費者 委員会で消費者庁が6 形態すべて電子化する 方針を示したことは非 常に驚きだった」
―――6形態すべての 電子化は国会でも議論 になった。
(続きは2021年8月5日号参照)