書面交付の電子化
衆院で修正可決された特定商取引法改正案が5月18日、参院で審議入りした。焦点となっている「書面交付の電子化」をめぐり、 電磁的交付の要件となる「消費者の承諾」の取得のあり方について、政府側は、同26日および28日の地方創生・消費者特別委員会で、家族等の関与を求める年齢を75歳以上とするアイデアを例示。 紙と電子の“ダブル交付”については、法的安定性の観点から否定的な考えを示した。電磁的交付が可能な類型を政令で絞り込む野党議員の提案にも否定的に応じた。)
「消費者の承諾」を取得するにあたって、家族など契約者以外の第三者を要件に加える考え方は、5月13日の衆院審議で消費者庁の高田潔次長が答弁したもの。 デジタル機器に不慣れな高齢者を念頭に「事業者のペースで不本意な契約をしない仕組みを作りたい」として、家族などに同席を求めたり、連絡を取る手段を示していた。)
この考え方をめぐり、電磁的交付に年齢上の制約がある法令の有無や年齢の目安について、28日の委員会で柳ヶ瀬裕文議員(日本維新の会)が質疑。高田次長は、 該当の法令を「承知しておりません」と答弁した一方、自主規制として日本証券業協会の「高齢顧客への勧誘による販売に係るガイドライン」(以下GL)を例示した。)
次長は、GLが「外交先での勧誘時に高齢顧客の家族が同席してその家族が買い付けに同意した場合でなければ即日の受注ができないことを規定している」と説明。 その上で、GLが75歳以上を目安に示しているとして「そういうところも参考にしたい」と述べた。GLは、慎重な勧誘による販売を行う必要がある年齢の目安を75歳以上に設定。 80歳以上の場合はより慎重な勧誘による販売を行う必要があるとしている。)
28日の委員会では、次長より、承諾に関与した家族などの第三者に対してもメール等による電磁的交付を行い、消費者被害の抑止を図るアイデアも示された。)
柳ヶ瀬議員は紙と電子の“ダブル交付”についても質疑。衆院の審議において、政府側が否定的な答弁を行ったことをとりあげ、消費者の利便性の観点から、改めて可能かどうかを聞いた。)
これに対して、井上信治消費者担当大臣が「契約書面等の記載事項を電磁的方法により提供することに加えて書面の交付を認めることは、 クーリング・オフの行使期間の起算点が不明確になる恐れがあるなど法的安定性の観点から適切とは言えない」と述べ、衆院審議と同様の見解を示した。
(続きは2021年6月3日号参照)