ワンクリック承諾不可、高齢者は第三者同意
衆院で修正可決され、5月21日に参院で審議入りした特定商取引法改正案。6月16日を会期末とする今国会での成立が濃厚とみられる一方、 ダイレクトセリング業界が注目する「書面交付の電子化」については、その意義が骨抜きにされかねない状況に傾きつつある。理由は、消費者庁が示した不合理な要件案。 電磁的交付への承諾を消費者から取得する際、WEBページで同意欄をチェックしてもらう方法を認めず、 オンライン非完結型の取引は紙で同意を得ることとする方針が衆院の審議で明らかにされた。5月26日より本格的に始まる参院の審議でさらなる要件の厳格化も予見され、 先行きの不透明感を増している。
消費者庁が示した「法定書面の電磁的交付」の要件の考え方〝
審議は4月27日、5月11日・13日の計3日間行われ、審議時間の多くが書面交付とクーリング・オフ通知の電子化に関する質疑に割かれた。 ここで、電磁的交付に反対する野党が、その意義や具体的な要件を集中的に質問。消費者庁からは、要件の詳細な中身については法案成立後に政省令、 通達等で定める旨が述べられる一方、現時点における基本的な考え方が示された。
この要件における重要ポイントが、電磁的交付を受けることに対する消費者の承諾と、交付方法の中身。 このうち前者については、承諾の①取得方法と②確認方法、③承諾時の説明内容の3点に関して、〝3要件〟とでも言うべき考え方が高田次長から示された。
①~③の骨子として答弁されたのは、
①口頭や電話だけで得た承諾は認めない
②承諾の確認に消費者から明示的に返答・返信がなければ承諾があったとみなさない
③承諾を取る際は承諾による効果やメール等で送付される内容を明示的に示す
という内容。 これら3要件は、消費者委員会が2月の建議で求めていた「承諾の実質化」を反映したものとなっている。
加えて次長からは、3要件を満たすための具体的な手続きのあり方についても触れられた。 この内容が、承諾を取得するための手段や電磁的交付そのものを大きく制約しかねないことから物議をかもしている。
法定書面の電子化が解禁済みの分野では、携帯電話やインターネット回線サービスを規制する電気通信事業法において、 総務省作成のガイドラインが利用者の明示的な承諾を得る手段の推奨例に「同意ボタンのクリックにより承諾取得とすること」を含めている。 次長の答弁は、電気通信分野より厳しい要件を特商法に持ち込むものとなる。
同ガイドラインでは、メールに貼り付けたURLから書面をダウンロードしてもらう交付方法を認めているが、 特商法ではこの方法で交付することも認めない旨が次長から述べられた。
(続きは2021年5月27日号参照)