シリーズ・特商法改正 ク・オフ、電磁的通知でも「発信主義」維持

メール不到達でも「行使が明確なら効力」確実に届くアドレス、通達で要請へ

 特定商取引法改正案に盛り込まれた「クーリング・オフ通知の電子化」をめぐり、メールでク・オフを申し出た場合も「発信主義」が維持されるとの考え方が示された。 法案の条文では「到達主義」が適用される余地が残り、消費者に不利益を生じるおそれがあるとして、国会で見解をただされた消費者庁が答えたもので、 現行法におけるハガキ等と同様の扱いとなることが示された。一方で同庁は、ク・オフのメールを確実に受信できる体制を事業者に求めていく方針にも言及。 ク・オフ用のアドレスが法的記載事項に近い位置づけとなる可能性が出てきた。
「記録媒体を発送した時」が議論に
 周知の通り、現行の特商法のクーリング・オフは発信主義を採用している。訪問販売で結んだ契約なら、契約書面を受領した日から8日間以内にク・オフのハガキを投函し、 消印で期間内であることが確認されれば、事業者のもとに届いた時に8日間を過ぎていても、無条件解約が成立する。 消費生活センターが特定記録郵便や簡易書留による発送を推奨するのは、発信主義のルールを最大限活用するためだ。
 一方、紙の書面による通知に加えて、電磁的な通知も可能とする改正を盛り込んだ法案は、書面と電磁的記録のそれぞれについて条文を設けた (表1参照、ク・オフ規定をもつ6取引類型から訪問販売の9条2項を例示)。
 ク・オフの通知が効力を生じる条件について、書面の場合は「当該書面を発した時」と規定。現行法と変わっていない。これに対して、新たに追加される電磁的通知は、 「記録媒体に記録された電磁的記録」に関して「当該記録媒体を発送した時」にク・オフが成立すると定める。
 この「当該記録媒体を発送した時」という条文が、消費者保護を訴える関係者の間で議論を呼んだ。電磁的なク・オフにおいて、 もっとも多用されると考えられるメールによる通知が、記録媒体を発送するという行為に含まれるかどうかはっきりしなかったためだ。
消費者庁審議官「メールも可能」
 仮に、CD―Rといったデジタル記録メディアを郵送する行為に限定されていた場合、メールの取り扱いは条文で触れられていないことになり、 民法にしたがって到達主義が優先する可能性がある。発信主義の書面より、メールのほうが消費者に不利になる懸念が浮上していた。
 この懸念が、4月6日の衆議院・消費者問題に関する特別委員会で取り上げられ、議員の質疑に対して消費者庁が返答。結論として、ク・オフをメールで申し出た場合も、 発信主義が維持される旨が示された(表2参照)。
(続きは2021年4月22日号参照)