2020年度の特商法執行状況

延べ処分数、コロナ下で4年ぶりマイナス
2020年度(20年4月~21年3月)に行われた特定商取引法違反の行政処分は、延べ件数が139件となり4年ぶりに減らした。 新型コロナウイルス問題で法執行にかかわる業務が制約された影響が大きいとみられ、特に、処分数の多かった都府県における減少が響いた。 国による処分数も事業実態等に基づく実質ベースでは減らした。処分された取引類型は訪問販売が半数以上を占め、住設・工事系の勧誘における違法行為が目立った。
延べ処分数21%減震災の11年度も減
 20年度の特商法処分の延べ総件数は139件で、前年度比は21%減。件数ベースで37件の減少とした(グラフ参照)。近年の処分は、 17年12月の改正特商法施行を境に増加。17~19年度と3年連続で増やしていたが、4年ぶりに減少に転じた。
 改正法施行以降の増加は、新設された業務禁止命令の〝上乗せ〟効果が大きく、ほとんどの業務停止命令(連鎖販売取引等に対する取引等停止命令含む)において セットで出されてきた。
 業務禁止命令の件数を除いた、業務停止命令と指示の合計処分数も増加。19年度は前年度比28%増の110件が行われ、 118件だった13年度以来6年ぶりに3ケタ台にのせていた。
 これに対して、改正法施行以降で初の減少となった20年度は、新型コロナウイルス問題が直撃。執行に関わる業務が大きく制約を受けたとみられる。 災禍にともなう処分数の大幅な減少は、年度はじめ直前に東日本大震災が発生した11年度においても生じ、この時は前年度に比べて33%のマイナスとなった。
東京都が大幅減 国も実質マイナス
 また、執行主体で見た処分数は、国(消費者庁と各経済産業局、沖縄総合事務局)が前年度と同じ89件を実施したのに対して、 都道府県は前年度比43%減の50件と大きく落ち込んだ。特に、法執行に力を入れてきた自治体ほどマイナス幅が大きかった。
 前年度に処分数の多かったトップ3を見ると、37件の処分を行っていた東京都は、20年度は9件に減少。前年度12件を行っていた大阪府も、20年度は3件と減らした。
 前年度において東京都に次ぐ15件を処分した埼玉県も、20年度は12件と減少。3府県合わせて計40件の減少としており、中でも東京都の大幅減が響いた形となっている。 処分を行った都道府県は11道府県にとどまり、残りの36府県では処分を未実施だった。
 一方、前年度と変わらなかった国も、事業実態に基づいた実質の処分業者数は減らしたとみなせる。
 業務停止命令と指示、業務禁止命令の同時適用や、単一事業者が行う複数の取引の処分、事実上一体となって活動していた複数の事業者の処分など、 処分の重複カウントを除いた実態に近い処分数は、前年度は18件。対して20年度は27件だったが、 これにはAmazonで偽のブランドバッグなどを出品していた13事業者に対する一斉処分が含まれた。このため、一斉処分を1事業者とカウントすると15件となり、 前年度を3件下回った。
 都道府県における実態ベースの処分数も、前年度の21件に対して20年度は16件と減らした。
(続きは2021年4月8日号参照)