DS化粧品 先行する「女性の活躍推進」
東京オリ・パラ大会組織委員会前会長の発言を機に、「女性の活躍推進」を改めて見直す機運が高まっている。このキーワードは、近年さまざまな分野で聞かれるようになったが、 実際の取組みとしては十分な動きにはなっていないのが実情だ。翻って、ダイレクトセリング業界、特に化粧品分野では、社会情勢に先んじるかたちで「女性の活躍推進」が進んでいる。 もともと、従来型訪販の時代から女性の力によって成り立ってきたビジネスであり、女性の共感力やクチコミ力が大きなけん引力となってきた。ライフスタイルの変化や、 コロナ禍の中で働き方が変わる中、性別を問わず働きやすい環境を整えて事業体制を強化する必要性が高まっている。
同社は、「女性の活躍推進」が社会的に注目される15年以上前から、産前休暇以外の制度について、男性社員にも同じ制度の適用を行ってきた。2017年には、 育児と介護に関わる人のための両立支援を目的とした「サポートブック」を作成するなど、一般社員だけでなく、管理職の理解を深める教育を行い、環境整備に努めてきた。 これらの結果、2016年には「女性の育児休業復職率」を連続10年100%で達成した。さらに、2017年には、「育児休業後の女性の定着率」において、3年連続で100%を達成した。 さらに、2018年には、「女性管理職比率」が10年間で2倍超に、2019年には、「正社員女性比率」が20年間約?ポイントアップ(34%↓53%)と、働きやすい職場環境が着実に構築された。 これらの取り組みは社会的にも評価され、2018年12月には、「forbes japan women award」、2020年2月には、 「大阪市女性活躍リーディングカンパニー優秀賞」をそれぞれ受賞した。
女性をメーンターゲットとした取組みだけでなく、男性を対象としたより働きやすい環境整備にも努めている。2020年6月には、男性の育児休暇取得者増を目的とした「パパブック」を作成した。 この背景には、日本では男性の育児休暇取得率が極めて低いという実情がある。20189年雇用均等基本調査によると、日本の男性の育休取得率は6.16%にとどまっている。ナリス化粧品では、 2018年4月~2020年3月までの2年間における男性の育休取得率は18.2%となっており、対象男性社員22人のうち4人が取得している。同社では、 2007年に3カ月の育休取得をした男性社員が初のケースだが、役職者の育休取得などによって、社内では男性が育休を取得しやすい環境が作られてきたという。
「パパブック」では、①男性育休取得の現状、②育休取得の必要性、③育休取得のメリット、④育休取得の準備、⑤育休取得体験者談、⑥Q&Aを掲載。男性が育児休暇を取得する社員側のメリットとして、 同社は①スキルの向上、②新たな視点やネットワーク、③子どもへの良い影響、④夫婦の良好な関係を指摘。企業側にとっても、生産性向上や新たな視点、仕事の効率化、 優秀な人材の確保といったメリットがある。ウィズコロナで働き方が多様化し、男性が育児に果たす役割や家事分担についても改めて見直す機会が増えている。 女性の活躍推進には、男性のワークライフバランスの改善も不可欠な要素と言えよう。
同社は2013年12月にES向上推進室を設置し、社員の声を聞きながら積極的な制度の活用とお互いをサポートし合う社内風土づくりを行っている。 これまでの主な取り組みとしては、ショートタイプ正社員制度、定年延長、ウェルカムバック制度、シーボンファミリー・デイの実施、社内報でのロールモデル紹介、セカンドキャリア研修など。 これらの制度によって、育児休業取得率は88%から95%に(2013年度と2018年度の比較)、勤続年数は7.0年から9.4年(同)に向上している。
このほか、最大手のポーラでは、昨年6月にサステナビリティ方針を策定し、2029 年までのSDGsの目標数値を設定。この中で、ジェンダー、年齢、地域格差、さまざまな「壁」の解消を掲げており、 ポーラにおける地域企業オーナー、地方自治体の協業などを強化するとともみ、女性管理職比率の男女同等、美容職のダイバーシティ推進、育休取得率の男女100%取得をめざしている。 さらに、3月8日の国際女性デーに合わせて、世界で困難な状況にある女性と少女のための支援活動を開始した。同社では、2020年1月に初の女性社長が就任。 従来以上に女性の力を活用した事業体制の強化を図っている。