DS化粧品 デジタル活用施策の導入
ニューノーマルの潜在需要掘り起こし 多様化するライフスタイル見据え
ニューノーマルの生活様式が定着してから、1年余が経過した。ダイレクトセリング業界の化粧品分野では、以前に比べて直接の対面やカウンセリングが難しい環境の中、
感染防止対策を徹底してサロン営業を行っている。当初は来店を躊躇している利用者も多くみられたが、いわゆる〝自粛疲れ〟や癒しを求めてサロンを訪れる女性が
戻る動きもあるようだ。同時に、ビデオ会議ツールやスマホアプリなど、IT技術を活用したカウンセリングや新しいサービスをDS化粧品各社が相次いで導入しており、
柔軟に消費者のニーズや価値観の変化に対応する動きがみられる。困難に負けず、アイデアを駆使した取組みが生まれている。
SNSで地域密着の情報発信
DS化粧品最大手のポーラは、直近の2020年12月期において、主力の委託販売チャネルの落ち込みを余儀なくされた。コロナ禍の中、
緊急事態宣言の発出によって外出自粛傾向が強まったことや、店舗の臨時休業および営業時間の短縮を余儀なくされたことで、
「ポーラ・ザ・ビューティー(PB)」をはじめとする国内店舗事業で新規獲得が苦戦したことが主な要因だ。ポーラブランド売上の7割以上を占める委託販売チャネルは、
PBをはじめとするサロン展開や「ビューティーディレクター(BD)」の営業活動によって構成されており、海外展開やECの伸長など売上構成比の変化があるとはいえ、
ポーラの屋台骨となっている。従来型訪販からサロンビジネスへのシフトによって新しいダイレクトセリングのあり方を示してきた同社だが、
コロナ禍で人との接触が難しくなったことで、思わぬ打撃を受けることになった。
▲SNSの情報発信に力を入れる
(ポーラ公式インスタグラム)
親会社のポーラ・オルビスホールディングスがこのほど策定した2021年~2023年までの中期経営計画の中で、
コロナ禍によってトレンドの変化を踏まえた方針を打ち出すことを明らかにしている。この中で、「ダイレクトセリング」スキンケア」「マルチブランド」を
柱として新たな成長戦略を構築するとして、ポーラブランドでは、販売チャネルを横断したデジタルプラットフォームの構築を急ぐ。
具体的には、コロナ禍の中でも好調に推移したECの売上を3倍(35億円→約100億円)とするほか、主力の委託販売チャネルでは、利益率の高いロイヤル顧客の育成を図る。
その一環として、ITを活用した施策の強化を行い、顧客ネットワークをオンラインで拡張するほか、店舗近隣の地元客を意識したショップアカウントからの発信、
オンラインイベント、SNS投稿からのエステ誘客など、ビューティーディレクターが積極的に情報を発信する密着型の戦略を進めていくとしている。
サロンでは既に顧客への事前カウンセリングのオンライン化を行っているほか、一部の店舗ではインスタグラムなどSNSを活用した情報発信を行っている。
販売員による情報発信は、情報の統括や、不用意な投稿による〝炎上〟といった問題があることから、その発信のあり方には慎重な取組みが求められる。
DS化粧品業界では、コロナ禍前は、現場の販売員による投稿を制限する動きもみられたが、コロナ禍によってニューノーマルの生活様式が定着し、
ITツールの活用がより進んだことで、風向きが変わってきたように思われる。ポーラが現場による積極的な情報発信に舵を切ったことが業界の動きにどう影響するか、
注目される。
外出困難な女性の ニーズにも対
ナリス化粧品は、セルフエステをメーンとした「デ・アイム」や、専門のスタッフによるクイックエステを提供する「ビューティサロン」といったサロンを展開し、
手軽に受けられるメニューによって幅広い女性層の顧客を獲得してきた。コロナ禍によって、一時は臨時休業や既存顧客のみ受付などの対応を行ってきたが、
現在はサロンで感染防止対策を十全に講じながら営業を続けている。ニューノーマルに対応した施策としては、昨年10月21日から、〝究極のパーソナル空間〟
である自宅でも施術が可能な新エステメニュー「プレミアムエステ」を行っている。サロンと同一のメニューを会員が場所を自由に選んで受けられるサービスによって、
人との接触を気にする女性のニーズだけでなく、家事や育児、介護など、さまざまな理由で外出が難しい女性に対しても、
安心して美容ケアを受けられるサービスとして訴求している。
▲自分に合うメークをシミュレーションできる
「バーチャルメーク」(ナリス化粧品)
近年、女性の価値観やライフスタイルの多様化が進んでいるが、コロナ禍によってそれが促進された。同社はそのような社会情勢を踏まえ、
「おこもり美容」という新しいスタイルを提案している。1月21日には「オンラインスキンケアモニター」を導入し、
自宅にいながら専属の美容部員とコミュニケーションをとってスキンケアレッスンをスタートした。もともと「デ・アイム」などで実施してきた
28日間のスキンケアモニターをより手軽・柔軟に受けられるようにしたもので、多忙な女性や店舗への来店に不安を感じる女性など、多様な女性の声を汲み取り、
施策に反映させた。さらに、2月?日に発売した新ポイントメークブランド「Vieta」と連動させて、
スマートフォンやPCから自分に合うメークをシミュレーションできる「バーチャルメーク」のサービスを導入するなど、
既存のノウハウとIT技術を組み合わせたサービスを次々と打ち出している。
既存ノウハウに IT技術取込み
ワミレスコスメティックスでは、公式ホームページやブログでさまざまな情報発信を行っているほか、
オンラインツールを活用した「フォトジェニックコンテスト」を開催して販売員の活動をサポートしている。
このほど開催された「第1回ワミレスフォトジェニックコンテスト」は、SNSの活用なリモートワークなどで、スマホやタブレット端末、
PCなどの画面に自分の顔が映る機会が増えたことを踏まえ、〝写真映え〟するメークアップをコンセプトに実施したもの。同社化粧品の販売員や愛用者が、
ワミレスサロンのスタッフからアドバイスを受けながらセルフメークを行い、それを撮影してコンテストに応募するスタイルで行われた。
490点の応募の中から最終選考で絞り込まれた?作品を、昨年?月に開催された全国大会「出逢いと感謝の集い」で展示し、来場者に投票してもらい、各賞を決定した。
メークアドバイスは、ビデオ会議ツールなどを駆使して行われ、スタッフと応募者が綿密にコミュニケーションを図りながら行われたという。
ワミレスではもともと、美容技術を競う大会を定期的に開催しており、今回の「フォトジェニックコンテスト」も、
これまで培ってきたメーク技術やカウンセリングのノウハウを背景に実施できたものだ。同社では若い世代の育成にも力を入れており、美容大会(SR大会)や各種イベント、スキンケアレッスン、
勉強会といった行事によってモチベーションアップを図ってきた。コロナ禍でリアルでのイベントが制限される中、ITツールを従来の施策に上手く組み込むことで、
販売現場の盛り上がりにつなげている。