書面交付の電子化 日弁連が反対の意見書、発出元は計20団体に
提出したのは「特定商取引法及び特定商品預託法の書面交付義務の電子化に反対する意見書」。提出先は消費者担当大臣、経済産業大臣、消費者庁長官、 内閣府規制改革推進会議議長、消費者委員会委員長および各政党。
意見書では、電磁的交付を可能とする法改正を「デジタル化の促進という結論ありきの方針」と批判。紙による交付の「告知・警告機能等を大きく損なう」もので、 特商法の「消費者保護機能を骨抜きにしてしまう危険性を有する」としている。連鎖販売取引や特定継続的役務提供、業務提供誘引販売取引で生じている消費者被害への 「実効性ある規制強化を検討すべき」とも求める。
紙による交付がもつ機能は、契約内容を一覧できる「確認機能」、債務の履行状況や契約の適合性の手掛かりとなる「保存機能」、契約締結を考え直させる「警告機能」、 クーリング・オフ等の解約手段を知らせる「告知機能」の4点を指摘。
電磁的交付は4機能を阻害するとして、その具体例に、スマートフォンでの閲覧は画面のスクロール、拡大が必要で「予備知識がなければ必要な契約条項を探し当てることは 容易ではない」と指摘。法律が求める8ポイント以上の文字の大きさの確保も「不可能」で、ク・オフの告知機能が果たされないとする。
データ書面のメール等による送信は、「過去のデータを順次削除をする者が少なくない」ことや、ウイルスを怪しんで「安易に開かないという意識」があるともする。
電磁的交付の前提となる消費者の承諾については、不意打ち・利益誘引型の勧誘での契約は「納得ずくの承諾を前提とすること自体が困難」と主張。 承諾のあり方を政省令やガイドラインでフォローするとした同庁の方針は「拙速な導入を進めることにほかならない」と批判した。
6取引類型における電子化の必要性については、訪問販売はその場で作成・交付が可能なため「必要性は存在しない」と主張。 連鎖販売は、概要書面を消費者が目にすることを「回避しようとするもの」としている。
1月20日の消費者委員会ヒアリングで、日本訪問販売協会が電子化方針を「青天の霹靂」と評し、過去に協会内で議論した経緯がない旨を述べたこともとりあげ、 「(訪販に)電子化を必要とする立法事実がない」と強調している。
(続きは2021年2月25日号参照)