NMI宮澤代表に聞くポイント「書面交付電子化」㊦
宮澤 政夫代表
前回(2月4日号3面)に続き、紙の書面の交付義務をもつ特定商取引法6類型全てで示された、電磁的交付解禁の方針をめぐる課題等について、 ネットワークマーケティング研究所(NMI、横浜市)の宮澤政夫代表に聞いた。(インタビューは1月22日実施)
―――特商法改正案の成立によって電磁的交付が可能となった場合、事業者側のメリットには、契約完了までの時間の短縮や書面の印刷コストの軽減などが考えられる。
反対にデメリットには何を考えられそうか。 「先に述べた通り、そもそも法案が国会で成立するか、不透明な状況にある。その点を踏まえた上で言うと、仮にデメリットが生じる場合は、今まで通り、 紙の書面で交付すればよい。NMIの会員の間でも『(電磁的交付を)やってもいいし、やらなくてもいい』という受け止め方をされている。
書面の交付は義務。もしも交付しなかったら、業務停止命令の対象になったり刑事罰を問われたりする。が、今後、電磁的交付が可能になったとしたら、 それは紙以外の選択肢が加わるということ。だから、電磁的交付を行わなくても法律違反となることはない。電磁的交付にともなうメリットもデメリットも、 それを受け入れるかどうかは各社の判断になってくる」
―――電磁的交付の解禁方針に対するNMI会員の反応は。
「『進めてほしい』と期待を口にする会員がいる一方で、『まだ早い』とか『悪質事業者に悪用されるかも』といったネガティブな見解もある。また、 実際に電磁的交付が可能になった場合、これを機会に『オンライン全般の整備を図りたい』というところもあれば、『ウチは(電磁的交付を)見送るだろう』というところもある。
各社の事情によって様々な意見があり、いずれかに偏っている感じはない。一つ言えることは、規制の実効性が保たれるのか、 消費者保護の目的が果たされるのかという疑問は事業者側にもある。皆がもろ手を挙げて賛成かと聞かれれば、決してそうではない」
―――代表自身はどう考えるか。
「個人の意見としては、まず手続きの部分で、アンケートなどによって事業者と消費者の両方の意見を聞き、公開の場で検討して、 やるかどうかの方向性を明らかにすべきだと思う」
―――電磁的交付は消費者側にもメリットをもたらすと考えられる。どのようなメリットを想定できそうか。
「契約までの時間の短縮や、スマートフォン上で手続きを終えられるといった点は、消費者にとっても利便性を向上させると考えられる。ただし、年齢層やデジタル、 オンラインの習熟度によって変わってくる話でもある」
―――具体的には。
「年齢層でセグメントすると、30歳代以下の多くと、40~50歳代の半分くらいは、電磁的交付のほうを歓迎しそうに思う。 60歳代以上で、スマートフォンやパソコンが苦手という場合は、安心を求める心理からも紙の書面を好むのではないか」
(続きは2021年2月11日号参照)