アリックス・宮城GMに聞く処分の深層㊦
前回(1月14日号1面)に続き、「アリックス・ジャパン」(東京都港区)の宮城邦夫ゼネラルマネージャーに、消費者庁による特定商取引法処分に至った背景、今後の取り組みなどを聞いた。 (インタビューは20年12月11日実施)
ゼネラルマネージャー 宮城邦夫
―――処分では氏名等不明示、迷惑勧誘、書面不交付が認定された。該当行為を行った会員を特定し、会社として処罰したか。
「消費者庁に聞いても、(該当会員の)具体的な名前は教えてもらえない。特定することは困難」
―――過去、法令違反や規約違反を理由に会社で会員を処罰してきたか。
「昨年(=19年)は2人、今年(=20年)は現在までに6人に行った(※)」
―――処罰した会員の中に、該当行為を行った会員が含まれる可能性は。
「もしかしたらいたかもしれない」
―――認定された行為は、19年7月~20年2月に発生していた。この間、会社の消費者ホットラインで類似の相談を受けたりした?
「消費生活センターから斡旋(あっせん)されてきた相談の中に、迷惑勧誘が疑われるケースはあった。ただ、処分の事例にあるような問題が大きいと考えられるケースは見当たらなかった」
―――会員を特定できないと、今後、同様のトラブルを生じるリスクがないか。
「今回の件があって、(連鎖販売取引の)スポンサリングができなくなるという理由で、当社を離れる方が出ている。狩猟型のビジネスをやっていた人がいなくなる流れが生じている。 一方で、製品や会社の文化、仲間が好きといった理由で残る方がいる。その方たちは『自分達は真面目にやっていたのに何故こうなるのか』という人がほとんど。 今は、その方たちと新しいものを作ろうとしている」
―――コンプライアンス政策について伺いたい。20年1月の立入検査の以前から行っていた取り組みは。
「消費者ホットラインでの相談受付、コンプライアンス専従スタッフによる〝消セン回り〟を行っていた。登録時は公的身分証のコピーの提出を求め、登録可能年齢は23歳以上としていた。 また、コンプライアンストレーニングの修了とテストへの合格をコミッション支払いの条件としていた。ウェビナーでコンプライアンスを周知するコーナーを設け、 『プレジデント』タイトル以上のリーダーとは自身のグループの解約状況等を話し合う機会を設けていた」
―――立入検査後に取り組んだことは。
「5月から『ウェルカム・コール』を始めた。登録を申請した方に必ず当社から電話をさしあげ、書面を受け取ったか、契約内容やクーリング・オフの説明をきちんと受けたかといったことを確認している。 不交付があった概要書面も形態を見直した。コンプライアンステストは、7月から、合格しないとスポンサリング自体できないようにした」
―――処分後の取り組みは。
「停止期間中はスポンサリングが禁じられる。一方で、優先顧客(=愛用会員)として登録いただくことは問題ない。ただ、その場合も(特商法の)訪問販売や電話勧誘販売の規制は受ける。 そのため、優先顧客として登録を申請した場合も『ウェルカム・コール』を実施する。
また、ZOOMや会場で行うセミナーは、まず最初にコンプライアンス遵守に触れていく。セミナーは、(処分前日の)11月19日以降で、会員のリクエストで開いた分を含め15回を行った。 昨晩のセミナーは400人に視聴いただいた」
―――経営政策上の見直しはあるか。
「一例として、表彰等の基準をタイトルではなく優先顧客の獲得数などにシフトしていく。会員にとっても、愛用者を増やすことがビジネスの安定につながると、改めて認識する機会になった。
現時点でリーダーから聞いている声は、コミッションに関するものより、愛用者向けのカタログを作ってほしいとか、計画中とされていた製品は出るのかといったほうが多い。 今後、イベントを開く場合も、製品を主体とするプロダクトフェアのような形でやる」
(続きは2021年1月21日号参照)