サロン展開が新たなステージへ 2020年ダイレクトセリング化粧品
ニューノーマル時代の施策相次ぐ 多様化するニーズへのきめ細かい対応
ここ数年、ダイレクトセリング化粧品市場は、サロンビジネスへのシフトが顕著だった。顧客接点と販売チャネルの多様化を目的にスタートしたサロン展開は、
普遍化するにつれて、そのあり方も多様化・細分化が進んできた。2020年もこの流れがさらに加速するとみられていたが、新型コロナウイルスの感染拡大によって、
その流れが大きく変わった。拠点をベースとしながら、オンラインでのカウンセリングやITを活用した教育、自宅訪問など、各社が独自の施策を取り入れて、
サロンビジネスも新しいウィズコロナに対応したスタイルにシフトした。この困難な時期に、〝人とのつながり〟の価値を如何に提供できるかが、
ウィズコロナを乗り切るカギと言える。
▲自宅での「おこもり美容」を提案(ナリス化粧品)
自宅で同じエステ柔軟に組み合わせ
年明けから深刻化した新型コロナウイルスの感染拡大で、DS化粧品企業のサロンビジネスは甚大な影響を受けた。女性の社会進出、それに伴う在宅率の低下、
消費者の価値観の多様化を背景に、このビジネスは従来型訪販からサロンをベースとしたカウンセリング販売へとその姿を変化させてきた。
2000年頃に始まった最大手ポーラのサロン本格展開を1つの起点とするならば、2020年はちょうど20年という節目を迎えた年。
今や、DS化粧品における主要スタイルと言える位置づけだが、コロナ禍によって「3密の回避」が求められる世の中になり、大幅な軌道修正を余儀なくされた。
緊急事態宣言の発出前後は、ほぼすべてのサロン・店舗が臨時休業を余儀なくされ、業績面で大きなダメージをもたらした。
その後は、十全な感染防止対策を講じながら営業を再開しているが、〝コロナ前〟と同じスタイルではなく、
各社がウィズコロナを前提とした営業スタイルを考案している。
ナリス化粧品は、サロン展開の中でも独自性が強い施策を強みとしてきた。同社はこれまでも低価格で手軽にお手入れができるセルフエステサロン「デ・アイム」を
全国展開し、差別化につなげてきた。近年は、「デ・アイム」のほかにも、これまでのサロン展開の成果をフィードバックした「ナリス ビューティサロン」を展開し、
多様化する女性のニーズに対応してきた。「ビューティサロン」は、女性のスキマ時間をターゲットにクイックメニューを主力としている。
同社は、ウィズコロナの生活を送る中でサロンでのフェイシャルエステの利用頻度を減らしている女性が増えていること、
安心・安全を求めるニーズが高まっていることなどを踏まえ、10月21日から自宅でもサロンと同じ施術を提供する「プレミアムエステ」を開始した。
サロンで複数の人と接触することを懸念し、フェイシャルエステを利用したくでも躊躇しているニーズに対応したものだ。〝究極のパーソナル空間〟である自宅で、
サロンと同じサービスを提供する取り組みは同社としても初めてで、約5000人のエステティシャンが対応する。新サービスの導入に当たって特別研修を行い、
場所を問わず同一のメニューを提供できるほか、自宅訪問でも感染防止対策に万全を期した。コロナ禍の中、さまざまな分野で「巣ごもり需要」が増加する中、
さまざまな理由で外出が難しい女性など、多様化するライフスタイルに応じて「おこもり美容」を提案していく。
▲参加者全員にPCR検査を実施して開催した
全国大会(ワミレスコスメティックス)
オンラインで事前のカウンセリング導入
全国に「ポーラ・ザ・ビューティー」などを展開するポーラは、いち早く事前カウンセリングのオンライン化を実施した。非接触で提供できるサービスについては、
来店前に提供することで、感染防止対策につなげるほか、顧客にとっても、仕事や家事の合間など、ちょっとしたスキマ時間を使えるなどメリットもある。
コロナ禍の影響で営業休止措置をとった期間があったことから、契約中のエステコースについては、契約期間を通常12カ月から18カ月に延長する措置をとった。
海外市場にも積極的に展開する同社は、業績面でもコロナ禍の影響を大きく受けている。最高峰スキンケアライン「B?A」のフルリニューアルや、
大ヒット商品「リンクルショットメディカルセラム」の刷新(2021年1月)など、商品面でも大規模な施策を用意しており、これからの盛り返しが注目される。
独自の「ホームケア+サロンケア」という美容スタイルを展開してきたシーボンは、オンラインの無料カウンセリング「シーボンオンラインビューティ・アドバイス」を
10月から開始した。全国に100店舗以上の「フェイシャリストサロン」を展開する同社では、化粧品の購入額に応じてポイントを付与、
それを使ってフェイシャルケアサービスを提供してきた。オンラインカウンセリングは、ニューノーマルにおける施策として、今後増えていくことが予想される。
シーボンの「オンライン ビューティー・アドバイス」は1回20分の事前予約制(1日2回まで)で、既存会員と新規顧客が対象。
対面カウンセリングで培ってきたノウハウを活かし、美容カウンセリング、化粧品の使い方アドバイス、顧客の肌に合った化粧品の紹介と販売を行う。
カウンセリング後、希望者にはアドバイス内容を記入したヒアリングシートをメールで送付し、顧客とのコミュニケーション強化につなげる。同社はこのほか、
「フェイシャリストサロン」の新メニューとして、非接触型の「顔筋ほぐしカッサケア」も導入しており、利用者は従来のオールハンドで行う
「東洋式美顔マッサージ」と選択できるようになった。
IT活用の情報発信 綿密な活動フォロー
ワミレスコスメティックスは、コロナ禍で「ワミレスサロン」をはじめ、活動が制約を受ける中、アナログ・デジタル双方で情報を発信し、
販売員のモチベーション維持を計っている。数々のショーやイベントのバックステージを担当してきた選抜美容チーム「ワミレスラスティングビューティー(WLB)」は、
関連イベントの中止・延期に伴い活動が停滞している状況が続いているが、公式ブログで「自宅で出来るケア」を紹介し、
販売員、顧客のつながりを維持するよう努めている。
商品政策では、創立40周年の節目に基幹ブランド「ザ ミネラルライン」の大幅リニューアルを実施。最新の化粧品研究をフィードバックして機能性を高めた新アイテムは、
12月8日に開催された全国大会「出逢いと感謝の集い」でも紹介された。節目の年に肝入りで開催された今大会では、参加者を例年の半数に制限するとともに、
主催者負担で全員にPCR検査を実施し、万全の状態で臨んだ。久しぶりのリアルでのイベントは盛り上がりを見せ、コロナ禍に負けず、
活動を通して次につなげていくための士気を高めた。