ジャパンライフ「天下り」問題㊦

「適切にヒアリングした」不開示理由と矛盾する回答
 元会長らが詐欺罪、出資法違反容疑で起訴されたレンタルオーナー商法の「ジャパンライフ」。同社の指導を担当した消費者庁取引対策課課長補佐が 「天下り」した件が、同庁の立入検査や4度に渡った行政処分のタイミング、内容に影響を与えたのではないか。
 くすぶり続けるこの疑惑について、同庁長官は「私どもが調べた限り」という前提の下、9月23日の定例会見で否定。調べた内容を開示できるか聞いた本紙に 「ヒアリング等々はしておりますけれども、それについて開示は致しません」と述べた。
 しかし、長官の説明を裏付ける行政文書を情報公開制度に基づき請求したところ、10月19日付で届いた不開示決定通知の理由は、 当該の文書を「そもそも当庁の職員が作成し又は取得していないことから、当庁において保有していない」というものだった。
 消費者庁は取引対策課だけで34人が在籍し、他の8つの課を含めると庁内全体で370人の職員が働く(4月1日時点)。不開示決定通知に記された理由は、 これら職員の誰も、「天下り」が一連の処分に影響を与えていないと結論づける文書を作成していないということを意味し、長官のコメントと相反する。
▲9月23日の定例会見で消費者庁の
   伊藤明子長官(右から2番目)は、
   取引対策課職員の「ジャパンライフ」への
   天下りがジャ社処分の時期、内容に影響を
   与えた可能性について、「私どもが調べた限り」
   という前提の下で否定
 このため本紙は、処分への「天下り」の影響に関する同庁の見解を改めて確認。
 長官が会見で述べた「私どもが調べた限り」との説明は、具体的に誰あるいはどの部署が、どのように調べたことを指したのか。 また、「天下り」が処分に影響を与えていないと結論づけた根拠は、具体的にどのようなものだったのか。 この2点を同庁総務課広報室を通じて問い合わせた結果、11月4日付で「消費者庁において、適切にヒアリングなどを行い、 結論付けたものになります」との回答をメールで得た。
 回答は、「天下り」の処分への影響を調べたという人物や部署、調査の具体的な内容、処分に影響していないという具体的な根拠のいずれにもノータッチ。 「適切にヒアリングなど」を行ったならば、そのヒアリングの内容を記したメモ等が存在してしかるべきだが、先に触れた通り、 情報公開請求の結果は庁内の誰も作成、取得しておらず、したがって保有もされていないというものだった。
 同庁は、「天下り」問題が表面化した17年当時より、長官会見や国会の委員会質疑といった場面で、「天下り」の処分への影響を否定する見解を示してきた。 したがって、「適切にヒアリングなど」が行われたという時期は、17年以前と考えてよいだろう。
 これに対して、現在の長官が着任したのは昨年7月。時期的に長官自らがヒアリングに関わったとは考えにくい以上、 着任以前に行われたヒアリングの結果を文書で確認し、会見で「ヒアリング等々はしております」と述べたと考えられる。ならば、 ヒアリング結果の文書は同庁内に存在するはず。しかし、情報公開請求の返答は「当庁において保有していない」。やはり矛盾が生じる。 会見における長官の説明は今も、宙に浮いた状態だ。
(続きは2020年11月26日号参照)